50代に突入すると、病気もなく体力だってまだまだ十分なのに、ちょっとしたことで「老い」を自覚することが多くなってきます。それは健診結果にも表れ始めて、正常値に戻るよう、医師から生活に制限を設けられてしまうケースも少なくありません。しかし、その制限は本当に必要なのでしょうか? 本記事では、そんな健診に憂鬱になるあなたへ『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考』(マガジンハウス)の著者で医師の和田秀樹氏が、「健診を気にするべきでない」理由について解説します。
血圧・血糖値・コレステロール値…良くない結果に肩を落とすも「健診の数値は気にしなくていい」ってどういうこと?【有名医師が助言】
健診の数値は気にしなくていい
わたしは高齢者向けの本を何冊か書いてきましたが、そのすべてに「健診の数値は気にしなくていい」と書いてきました。ほんとうは「受けなくていい」と断言したいのですが、職場の健診というのはそうもいきません。50代には言いにくいのです。
でもここはあえて言っておきましょう。たとえ健診を受けて数値の異常があれこれ見つかっても、気にしないことです。実際に体調の悪さやいつもと違う異常を感じているというのでしたら別ですが、気分もいいし食欲もやる気も十分というのでしたら、いまがベストなのですから何も気にすることはありません。
その理由を簡単に説明してみます。血圧と並んで健診の数値で気になる(引っ掛かりやすい)のが血糖値です。例のヘモグロビンA1c(エーワンシー)で示される数値が6.0を超えると糖尿病の予備軍となります。この時点でウンザリするほどの食事制限を受けるのは言うまでもありません。
つまり一度でも健診の数値が引っ掛かってしまうと、長い期間、食事内容を制限され、薬を飲まされ、定期的に検査を受け続けることになります。数値が異常というだけでいきなり病気が見つかったり入院治療ということはありませんが、ふだんの生活が健診の数値でものすごく不自由になってくるのです。
では何のために医学は数値の異常に介入してくるのでしょうか。言うまでもなく、数値を正常に戻すためです。正常に戻せば、病気のリスクが減ると信じられているからです。
ところが、それを真っ向から否定するデータがあります。アメリカの国立衛生研究所の下部組織がこんな研究を行っています。糖尿病患者1万人を2つのグループに分けて1つは標準療法、もう1つのグループには強化療法を試みます。
「強化療法群」はヘモグロビンA1cを正常値の6.0%未満に抑え、「標準療法群」は7%~7.9%に抑える緩めの療法です。いまの日本の医学常識を当てはめれば、結果は明白です。「強化療法群」のほうが健康を維持できるはずです。ところが3年半後の死亡率は「強化療法群」のほうが「標準療法群」より高かったのです。
同じようなデータはほかにもありますが、今度はコレステロール値についてのデータを紹介してみます。