困難な事態に直面したとき、私たちはどう乗り越えたらいいのでしょうか。現役住職で著者累計100万部を超えるベストセラー作家の名取芳彦氏が、困難に直面している全ての人に捧げる、一休さんが最期に弟子たちに遺した、遺言のエピソードを教えてくれました。
どうにもならない事態に直面したら読みなさい…「一休さん」が弟子へ遺した「最期の言葉」【現役住職のベストセラー作家が解説】
「『やるだけやったら、あとはお任せ』がいい」…人事を尽くす、そして天命を待つ
一休さんが最期に弟子たちに遺した言葉
一休さんのエピソードとして伝えられているものに、遺言の話があります。住職をしていたお寺を一休が去るとき、弟子たちに「遺言を文箱の中に入れておいた。お前たちがどうにもならない事態に直面したら開けなさい」と伝えます。
一休の死後、お寺は困難な事態に遭遇します。知恵を出し尽くした弟子たちが最後に文箱を開けると紙が一枚。「なるようになる。心配するな」と書いてありました。
困った事態に対処しようと知恵を絞り、さまざまな試みをし尽くしたら、それ以上できることはありません。一休さんのエピソードは、「やるだけやったら悪あがきせずに、あとは天に任せればいい」ということを私たちに教えてくれます。
一つの出来事は、多くの縁が集まった結果です。望む結果があるなら、そのための縁を集めなければなりません。しかし、すべての縁を自分で集めるのは不可能です。大切なのは、自分の力で可能な限り縁を集めること。一休の弟子たちも、集められるだけの縁は集めました。そこから先は「なるようになる」とすればいいのです。
全力のあとのほったらかし……自然界の動物の子育てに似て、理に適った対処法でしょう。
「『前は、たまたまうまくいった』くらいに考える」…人生を好転させる「ありがたい」の気持ち
物事の中にある「おかげさま」を見つける
「過去をふり返るのは、何かを生み出すときだけでいい」は私の好きな格言です。現在の自分を惨めにするような過去のふり返り方はしないほうがいいとつくづく思います。以前うまくいったことがあっても、「あれは、たまたまうまくいっただけだ」と考えることができれば、過去に引きずられなくてすみます。
物事は縁が集まった結果です。縁の中には、個人の力が及ばない社会や経済状況などの他に、自己投資をしておく、人脈を作っておく、実力をつけておくなど自分で引き寄せられるものもあります。
これらの縁を大別すると、「時」と「人」に分類できます。ですから、「前は、たまたま時と人がそろった結果、うまくいった」と考えても差し支えありません。「たまたま」は、なかなか起こらないことですから「有り難い」と同義です。そこから感謝が生まれ、“おかげ”を感じられるなら、過去をふり返るのもいいということです。
また、現在うまくいっていないことがあっても「まだ、時と人がそろっていないのだ」と考えれば折り合いがつきます。次のタイミングに備える活力も生み出されます。
名取 芳彦
住職