生き生きと快活に年を重ねるためには、心身ともに健康であることが大切です。健康維持のために、心理学者の内藤誼人氏が推奨するのが「運動」です。内藤氏の著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より、年配者が運動を楽しむためのコツについて詳しく見ていきましょう。
〈一日10分の習慣化〉で睡眠の質が向上し、疲れにくくなる!自宅でできる、年配者におすすめの「運動」とは
有酸素運動を取り入れる
毎日、数分間でもかまいませんので運動する習慣を身につけましょう。
米国ピッツバーグ大学のカーク・エリクソンは、120名の年配者に週に3回ほど、エアロビ運動をしてもらいました。
エアロビ運動というのは、エアロビクスのダンスが有名ですが、別にダンスでなくとも大丈夫です。筋肉への負担が比較的軽い、有酸素運動のことをエアロビクスと呼びます。具体的には、軽めのウォーキングなどでもよいと思います。
さて、運動をするようになった年配者の脳を調べてみると、海馬の体積が2%増えることがわかりました。海馬は、主に記憶などを司る領域のことですので、記憶力がアップしたと考えてよいでしょう。運動をしていれば、脳も活性化して、ボケにくくなります。
外出が苦手と感じる人は、ヨガはいかがでしょうか。自宅でも簡単にできます。
オーストラリアの健康コンサルタントのジョナサン・ハルパーンは、60歳以上で、不眠症に悩む人を募集し、参加してくれた57名には、12週間のヨガコースを受けてもらいました。26名はコントロール条件に割り振り、特に何かをしてもらうこともしませんでした。
その結果、ヨガを習った人たちは、コントロール条件に比べて、睡眠の質が向上し(ぐっすり快眠できるようになった)、しかも睡眠の長さも改善されました。さらに、うつも減り、疲労も感じにくくなることも明らかにされました。
ヨガは、身体を健康にするだけでなく、ストレスや不安も減少させてくれるのです。
歳をとってくると、激しい運動はリスクを伴います。病気を予防しようとして、つい激しい運動をすると、「年寄りの冷や水」になって、かえってよくありません。
毎日、ストレッチやヨガをしてみてください。10分でも20分でも、少し身体を動かすと気持ちよく睡眠をとることもできますし、メンタルも上向きになります。
内藤 誼人
心理学者