長寿化が止まらぬ日本では、親の介護と定年を迎えたあとの自身の老後問題が重なるケースも少なくありません。そこで頼りになるのが「介護施設」です。ただ、介護施設にはさまざまな種類があり、選び方を誤ると「思わぬ悲劇」に見舞われることも……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに高齢者施設選びの注意点とポイントを解説します。
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知らなかった…介護費用の負担を減らせる「5つ」の制度
毎月の介護費用負担に悩まされていたAさんですが、実は、介護費用の負担を軽減できるいくつかの公的な制度があります。
1.高額介護サービス費制度
「高額介護サービス費制度」とは、1ヵ月で支払った利用者の負担額が限度額を超えたとき、払い戻しを受けられる制度です。年収約370万円~約770万円の世帯であれば、月額4万4,400円が負担限度額となりますが、住民税非課税世帯は月額2万4,600円が負担限度額となります。
2.高額介護合算療養費制度※
「高額介護合算療養費制度」は、医療保険と介護保険による1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担額(合算額)が、各所得区分に設定された限度額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。
年収約370万円~約770万円の世帯であれば負担限度額は67万円で、住民税非課税世帯の場合は19~34万円です。
※ <参考>関係府省提出資料(6/9)
(https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/senmon138shi02_6.pdf)
3.介護保険負担限度額認定制度
介護保険負担限度額認定制度は、低所得者が老人ホームを利用する際に、食費や居住費の負担額を軽減する制度です。
認定を受けるためには、「生活保護を受給していること」「世帯全員が住民税非課税」などの要件があります。また、対象者の資産によっても負担額が変わります。
4.社会福祉法人等利用者負担軽減制度
「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」は、社会福祉法人が提供する介護サービスを低所得者が利用する際、自己負担額を軽減できる制度です。対象施設を利用した際の食費や居住費が適用となります。
5.その他自治体独自の制度
その他、自治体が独自に制度を設け、家賃の補助やオムツの支給などを行っています。自治体によって制度の内容や対象となる要件もさまざまであるため、ご自身の自治体窓口やホームページでご確認ください。
FPから一連の説明を受け、上記の制度を知ったAさんは「知らなかった……こんなに便利な制度があったんですね。よかった、なんとかなりそうだ!」と歓喜して帰宅されました。
結局、Aさんの父親は「高額介護サービス費制度」を利用することで自己負担を軽減することができたそうです。また、タイミングよく空きが出たようで、筆者の勧めどおりサ高住から特養へ入所することが叶ったそう。月々の費用も年金の範囲内で問題なく納められるようになりました。
良いことだけが書かれたパンフレットには要注意
慣れ親しんだ自宅から施設へ住まいを移すと、環境の変化やストレスなどから体調を崩し、思わぬ入院や介護が必要になるケースも少なくありません。今回のAさんのように、入所時のパンフレットなどに記載のない費用が発生する場合もあります。
高齢者施設への入居を検討する際には、いま現在は介護が必要なくとも、どのような場合に費用が発生するかよくシミュレーションを行いましょう。
手元の資金が少ない場合には手頃な価格帯の施設が魅力的に思えますが、今回のように介護が必要になった場合負担額が増えるなど、デメリットもあります。
施設ごとの違いをよく把握したうえで、どの施設が入居する本人にとって適切か、医師やケアマネージャーなどの専門家にも相談のうえ、後悔のない選択をしましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役