繰上げる? 繰下げる? 年金いつからもらうか問題

メタボ体質のAさん(58歳)は、50歳を過ぎたころから会社の健康診断でいつも引っかかります。

ここ数年は血圧や尿酸値、コレステロール値がとても高く定期的に通院はしていますが、医者から処方された薬は面倒で指示通りに飲めていません。独身のため外食が多く、お酒も大好き。がんの家系ということもあり、あまり長生きできないのではないかと思っています。

先日、会社で受講した「定年後の生活設計を考えるリタイアメントセミナー」で年金の繰上げ・繰下げ受給の話を聞き、どうせ長生きできないだろうから60歳になったらすぐに年金をもらおうと考え始めました。

一方で、思った以上に長生きしてしまった場合、医療費や介護費が心配でなりません。少しでも年金の受給を遅らせて、その額を増やそうかとも考えます。

「いったい俺はどうすればよいのだろうか……」とAさんは頭を抱えてしまいました。

増える年金、減る年金

年金の繰上げ・繰下げ受給のメリットとデメリットとして真っ先に挙げられるのが、年金の増額と減額です。

年金を増やす方法として知られるのが受給開始年齢の繰下げ。本来の受給開始年齢である65歳で受給せず、66歳以降に受給を繰下げた場合、年金は1ヵ月あたり0.7%増額されます。これが繰下げ受給のメリットの1つです。

受給開始を75歳まで繰り下げると増額率は84%です。たとえば、年金額が月15万円(年180万円)の方が75歳まで繰り下げた場合、受給できる年金額は月27.6万円(年331.2万円)まで増額されます。

一方、本来の受給開始年齢である65歳を待たずに前倒しで年金を受給した場合は年金が減額されます。これが繰り上げ受給のデメリットの1つです。減額率は1ヵ月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの方は減額率0.5%)なので、60歳から受給すれば年金額は24%減になります。

たとえば、年金額が月15万円(年180万円)の方が60歳から受給した場合、受給できる年金額は月11.4万円(年136.8万円)まで減額されます。

繰上げ受給のデメリットはいろいろ

繰上げ受給の場合、65歳まで待たずに年金を受給できること自体はメリットだといえるでしょう。しかし、その額は減らされるというデメリットがあります。また、その他にもデメリットがありますからいくつか挙げてみましょう。

  • 一度繰上げ請求をすると取り消すことはできず、減額された年金を一生涯受け取ることになる。
  • 繰上げ受給は老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)を同時に行う必要があるため、柔軟な老後の生活設計ができない。65歳以降であれば、たとえば、65歳から老齢厚生年金を受け取り、老齢基礎年金は繰下げ待機をして年金額を増やすということが可能。
  • 繰上げ受給をしたあとに障害状態になった場合でも、原則として障害年金を受け取れない。
  • 老齢厚生年金に加給年金が付く場合でも、加給年金は繰上がらない(65歳になってからの受給)。
  • 繰上げ請求すると国民年金に任意加入できず、また、保険料免除や納付猶予を受けた期間の追納もできなくなる。

そして、気になるのは繰上げた場合の受給総額です。60歳から受給した場合の総額と65歳からの受給総額がほぼ同額となるのは80歳~81歳。ここまで長生きできないのであれば繰上げて受給したほうがよいということになりますが、寿命は誰にもわかりません。