長寿化が止まらぬ日本では、親の介護と定年を迎えたあとの自身の老後問題が重なるケースも少なくありません。そこで頼りになるのが「介護施設」です。ただ、介護施設にはさまざまな種類があり、選び方を誤ると「思わぬ悲劇」に見舞われることも……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに高齢者施設選びの注意点とポイントを解説します。
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「サ高住」に潜むデメリット
いわゆる「高齢者施設」にはさまざまな種類があります。今回、Aさんの父親が入居していたのは一般型のサ高住です。入居者は自立している人から要介護の人までと幅広く、主に民間企業が運営しています。なお、部屋は個室で、毎日の安否確認や生活相談といったサービスが受けられます。
入居一時金は10~20万円程度と、初期費用を抑えることができる一方、介護サービスを利用する場合には外部事業者を頼ることになり、利用した分だけサービス利用料を負担する仕組みとなっています。
そのため、Aさんの父親のように介護サービスを受ける頻度が多くなると、その分月々の負担額は増えます。
また、サ高住のなかには“介護型”といわれる、一定の基準を満たした「特定施設」があります。特定施設では、介護度に応じて、定額料金で介護サービスを受けることができます。介護度が上がらない限りは介護サービス費の変動がないため、月々の費用を計算しやすい一方、外部の介護サービスは利用できないという点がデメリットです。
「特養」なら、低負担で介護サービスが受けられる
Aさんの父親の場合、現在入居している一般型のサ高住から介護型へ転居しようにも、年金だけでは費用を賄えません。そこで、筆者は「特別養護老人ホーム(以下、特養)」を案内しました。
特養は要介護3以上の人が入居でき、4人部屋などの多床室から個室まで部屋の種類はさまざまです。年金の範囲内で入居できるよう、介護保険負担限度額認定制度や社会福祉法人等利用者負担軽減制度(後述)が設けられています。
特養は人気が高いため施設によっては待機者がおり、すぐに入居できないケースがあります。前払金は不要で、運営は地方公共団体・社会福祉法人が行っています。
高齢者施設にはこのほか、養護老人ホームや認知症を対象としたグループホームなどがあります。