退職金の受け取り方で「手取り総額」が変わる

■退職金を“一括”で受け取る場合

退職金を一括で受け取る(退職一時金として受け取る)場合、課税所得の区分としては「退職所得」となります。退職所得は「分離課税」となるため、他の所得とは別で(=分離して)税額が計算されます。

また、「退職所得控除」という仕組みが設けられているため、働いた年数が長いほど、退職金額が大きくても税負担が重くならないような仕組みになっています。また、一括で受け取った場合には退職金に対して社会保険料がかからないというメリットもあります。

退職所得控除額の計算方法は下記のように、勤続年数が「20年以下」か「20年超」かによって異なります。

出典:国税庁タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
[図表2]退職所得控除額を求める計算式 出典:国税庁タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

Aさんは会社に38年間勤めたので、退職所得控除額は、下記のように求めることができます。
800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円

Aさんの退職金は2,000万円なので、退職所得控除額2,060万円を引くと、課税対象は0円となります。

つまり、Aさんが退職金を一括で受け取った場合はこの退職金に対して税金がかからないということです

■退職金を“分割”で受け取る場合

退職金を分割して受け取る(=企業年金として受け取る)場合、課税所得の区分としては「雑所得」となります。年金額に応じた公的年金等控除の対象となりますが、雑所得は「総合課税」であるため、公的年金(老齢年金など)などと合算して(=総合して)税額が計算されます。控除を超えた分は雑所得として、毎年所得税・住民税の課税対象となります。