退職金には主に「一括で受け取る方法」と「分割して受け取る方法」があります。この受け取り方の違いで、場合によっては数百万円も損してしまう可能性があると、FP Office株式会社の大越奈美FPはいいます。定年を間近に控える59歳のサラリーマンAさんの事例をもとに、受け取り方の違いによる「手取り額の差」をみていきましょう。
えっ、どういうこと?…退職金2,000万円を“分割”で受け取る予定の59歳・定年直前サラリーマン、思わず耳を疑った「同期のひと言」【FPの助言】
退職金の受け取り方で「手取り総額」が変わる
■退職金を“一括”で受け取る場合
退職金を一括で受け取る(退職一時金として受け取る)場合、課税所得の区分としては「退職所得」となります。退職所得は「分離課税」となるため、他の所得とは別で(=分離して)税額が計算されます。
また、「退職所得控除」という仕組みが設けられているため、働いた年数が長いほど、退職金額が大きくても税負担が重くならないような仕組みになっています。また、一括で受け取った場合には退職金に対して社会保険料がかからないというメリットもあります。
退職所得控除額の計算方法は下記のように、勤続年数が「20年以下」か「20年超」かによって異なります。
Aさんは会社に38年間勤めたので、退職所得控除額は、下記のように求めることができます。
800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
Aさんの退職金は2,000万円なので、退職所得控除額2,060万円を引くと、課税対象は0円となります。
つまり、Aさんが退職金を一括で受け取った場合はこの退職金に対して税金がかからないということです。
■退職金を“分割”で受け取る場合
退職金を分割して受け取る(=企業年金として受け取る)場合、課税所得の区分としては「雑所得」となります。年金額に応じた公的年金等控除の対象となりますが、雑所得は「総合課税」であるため、公的年金(老齢年金など)などと合算して(=総合して)税額が計算されます。控除を超えた分は雑所得として、毎年所得税・住民税の課税対象となります。