退職金には主に「一括で受け取る方法」と「分割して受け取る方法」があります。この受け取り方の違いで、場合によっては数百万円も損してしまう可能性があると、FP Office株式会社の大越奈美FPはいいます。定年を間近に控える59歳のサラリーマンAさんの事例をもとに、受け取り方の違いによる「手取り額の差」をみていきましょう。
えっ、どういうこと?…退職金2,000万円を“分割”で受け取る予定の59歳・定年直前サラリーマン、思わず耳を疑った「同期のひと言」【FPの助言】
「退職金は分割一択」堅実なAさんだったが…
上場企業に勤めるAさん(59歳)。新卒の22歳から38年間サラリーマンとして会社に勤めあげ、60歳の定年を間近に控えています。
Aさんの会社では、退職金を一括で受け取るか分割で受け取るか選ぶことができます。まじめで慎重派のAさんは「大金がいきなり手元に入るのは怖いから」と、分割で受け取るつもりです。
しかし、ある日の昼休みのこと。食堂で同期のBさんと一緒になり、退職後の話で盛り上がっていると、どうやらBさんは一括で受け取るつもりだといいます。
Aさん「一括で受け取って大丈夫か? 気が大きくなって使いすぎるかもしれないし、銀行からひっきりなしに営業の電話が来たりして、変な金融商品買わされたりしそうで怖いけどな」
Bさん「まあなあ。そうかもしれないけど、そんなことよりせっかくの退職金が税金で減ってしまうほうがよっぽど嫌だけどな」
Aさん「えっ、どういうこと?」
Bさん「受け取り方によって、税金の計算方法が全然違うらしいんだよ」
同期の話に驚いたAさんは、以前から付き合いのあったファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねることにしました。定年後の資金繰りについて相談するついでに、退職金についてもより詳しく聞いてみようと思ったのです。
Aさん「定年が近いので、退職金の受け取り方をそろそろ決めなきゃと思っていて。僕は分割で受け取るつもりだったのですが……一括か分割か、どちらのほうがいいですかね?」
Aさんから一連の話を聞いたFPは、次のように説明しました。