「酒は百薬の長」という言葉から、適量のお酒は身体に良いといわれていますが、これは医学的にも証明されています。本稿では、2012年の上皇陛下(当時の天皇陛下)の心臓手術を執刀した経験もある心臓血管外科医の天野篤氏による著書『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー)から一部抜粋し、飲酒と心臓病の関係性について解説します。
60代・70代も1日ビールなら「中瓶1本」、ワインなら「グラス2杯」が身体に良い…心臓病に“なる人”・“ならない人”の徹底的な違い【上皇陛下執刀医が解説】
適量のお酒が心臓を守る!?
ビール1日500ミリリットルで、心血管疾患のリスクが減った米国の調査
適度な飲酒をしている人は心臓発作が大幅に少ない――。
米国でそんな研究結果が報告されました。マサチューセッツ総合病院の研究グループが約5万3000人(年齢中央値60歳、女性60%)を3~4年にわたり追跡調査したところ、軽度/中度のアルコールを摂取していたグループは、アルコールを摂取しない人や摂取量が少ない人と比較して、心血管疾患のリスクが21.4%減少していました。
ちなみに今回の研究での軽度/中度のアルコール摂取は、男性が1日ビール500ミリリットル、女性は250ミリリットルまでとされています。
この研究では併せて脳の画像検査も行われ、軽度/中度のアルコールを摂取していたグループは脳の扁桃体(へんとうたい)でのストレスシグナル伝達が低下していたといいます。
研究者は、「軽度から中程度のアルコール摂取が扁桃体の活動を抑制する神経生物学的な影響を及ぼし、それが心血管の保護効果をもたらす可能性をはじめて示した」としています。
今回の研究対象になった5万3000人は“素養”がはっきりわからないため、これといった基礎疾患がなく、もともと心臓血管疾患のリスクがとても低い健康な人たちがサンプルになっている可能性があるので、結果をうのみにするのは注意が必要です。ただ、それでも「適度な飲酒がストレスを緩和し、心臓にとってプラスに働いた」と考えられるのはたしかです。