在宅勤務で増えた会議の回数と労働時間

新型コロナウイルスによるパンデミックはセグメンターにもインテグレーターにも、困難な状況をもたらした。仕事と私生活の空間的、時間的な隔たりがなくなった知識労働者は自分自身でその線引きをすることを余儀なくされたのである。300万人以上の労働者を対象とした全米経済研究所の調査は、在宅勤務により会議の回数は13%増加し、1日の労働時間は8%増加したことを示している。これは労働時間が1人あたり平均で48分以上増えたことを意味する。

「こうした労働時間の増加は、仕事と私生活の隔たりが曖昧になった結果と考えられる。自宅とオフィスが一緒になったことで仕事を切り上げるのが難しくなった」と研究者たちは書いている。失業率が記録的な水準に達した期間中も仕事を続けられた多くの人は在宅勤務をすることとなった。だが、それは自宅で仕事をする生活ではなく、オフィスで寝起きするような生活だった。これは自宅で子育てしながら働いていた人は特に感じていたことだ。ビバリー・ソテロもそのひとりである。

ビバリーはカリフォルニア州オークランドの小学校で教師として働いている。パンデミックの間も35平米のワンルームで1年生の授業を受け持っていた。その背後で5歳の娘のシーサは幼稚園のリモート授業に参加した。「親をフルタイムでできませんでした。まず先生をしなければならなかったのですから」とビバリーは話す。パンデミックはシングルマザーである彼女を含む多くの親に仕事と育児の両方を同時にこなすことを強要した。


ワンルームの一角に娘用のスペースをつくった。娘を座らせ、その前にノートパソコンを立てた椅子を置く。ビバリー自身は部屋の反対側でヘッドフォンをつけて授業をした。1、2時間おきに、ビバリーは1年生の生徒たちに少しの間、お絵描きをするように指示してカメラをオフにし、娘の様子を見た。ある時からアパートの真ん中にテントを設営して自分だけの小さな空間を持てるようにしたとビバリーは言う。「もう、地獄でした」と彼女は言う。「ほかにふさわしい言葉がみつかりません」