ドライバーなしで自動車が走る「自動運転」。2021年3月に日本で登場したホンダの「レジェンドハイブリッドEX」は、自動運転時に起きた事故の責任が車側に求められる「レベル3」となる、世界初の認証車となりました。鈴木均氏の著書『自動車の世界史』(中央公論新社)より、この先、普及していくであろう「自動運転」最前線を、詳しく見ていきましょう。
「渋滞運転機能」で運転中にカーナビ検索やテレビ視聴もできる〈ホンダ・レジェンド〉だが…“運転復帰要求”にドライバーが迅速に応じなかったらどうなる?【専門家が解説】
公道上の「自動運転レベル3」を実現
米中に対する日本の出遅れが指摘されるなか、自動運転中の事故の責任が運転者(レベル2)から車(レベル3)に移行した、世界で初めての型式認証取得車が、2021年3月に日本で登場した。ホンダ・レジェンドハイブリッドEXであり、レジェンドとしては5代目となる。
ホンダはすでにレベル2の半自動運転機能、ホンダ・センシングを各車に装備しているが、ルーツをたどると1971年に着手した、レーダーを使った衝突軽減(自動)ブレーキの研究に遡ることができる。これに誤発進抑制、歩行者事故低減ステアリング、車線逸脱抑制と維持支援、アダプティブ・クルーズ・コントロールなどを加え、2014年にオデッセイに装備したのが、初代ホンダ・センシングだった。20年にはホンダの国内新車販売台数の9割以上に装備されている。
21年にレジェンドに初導入されたホンダ・センシング・エリートは、従来の機能にトラフィックジャム・パイロット(渋滞運転機能)を加え、これが作動する間がレベル3の自動運転に相当すると、国土交通省より型式指定を受けたのである。
道交法の改正も行われ、レベル3で(渋滞中の高速道路などを)走っている間は、ナビ画面で目的地を検索したり、テレビやDVDを視聴できるが、すぐに運転に復帰できることが条件となっており、スマホの操作は推奨されない。
そして渋滞が解消して速度が上がると、車が運転者に対して操縦を引き取るよう繰り返しパネル上の警告表示、次いで警告音を発し、そしてシートベルトに振動を加えるなどして要求し、応じ続けなかった場合は、左車線へ車線変更をしながら減速・停車を支援する緊急時停車支援機能を搭載する。
ホンダは開発にあたり、約1,000万通りのシミュレーションと、130万キロ以上の実証実験を行った。レーダーセンサーとLiDARセンサーそれぞれ5基、フロントセンサーカメラを2基搭載しており、新車価格は1,100万円だが、ホンダ・センシング・エリートを装備していないモデルよりも375万円も高くなっている。
LiDARとは、レーザー光を照射して対象物までの距離や形状を測定する装置のことであり、古くは航空機のレーダーに使われ、今ではiPhoneのカメラを被写体との距離測定でアシストしている。