ドライバーなしで自動車が走る「自動運転」。2021年3月に日本で登場したホンダの「レジェンドハイブリッドEX」は、自動運転時に起きた事故の責任が車側に求められる「レベル3」となる、世界初の認証車となりました。鈴木均氏の著書『自動車の世界史』(中央公論新社)より、この先、普及していくであろう「自動運転」最前線を、詳しく見ていきましょう。
「渋滞運転機能」で運転中にカーナビ検索やテレビ視聴もできる〈ホンダ・レジェンド〉だが…“運転復帰要求”にドライバーが迅速に応じなかったらどうなる?【専門家が解説】
ぶつからない車
「ぶつからない車」が世間で認知されるきっかけを作ったのが、スバル・レヴォーグやインプレッサに装備されるアイサイトだ。1989年、エンジンの燃焼を可視化するために開発したステレオカメラから派生した技術だった。
99年、この技術を最上位機種であるレガシィ・ランカスターに搭載し、車両前方の状況を読み取らせ、①車間距離が詰まったら警報を出し、②車線逸脱警報を出し、③前走車との車間距離を自動制御するクルーズ・コントロール(運転者が指定した一定速度を車が自動的に保って走行する機能)と、④カーブ逸脱警報と制御を(ある程度まで)行った。
これを磨き上げ、世界で初めてミリ波レーダーなどを併用せず、ステレオカメラだけでプリクラッシュブレーキ(衝突直前に自動でブレーキがかかる装置)と、全車速追従機能付クルーズ・コントロールを備えたアイサイトが2008年に登場し、レガシィに搭載された。
10年には、とっさの障害物の前で完全に停止するシステムにアップグレードされ、手放しで自動でレガシィが止まる、あのテレビCMが登場した。この時点で、アイサイトを装備するオプション価格は10万円まで低下しており、世間の認知が一気に高まった。
日産は2019年、スカイラインにプロパイロット2.0を初装備した。矢沢永吉が赤いスカイラインの運転席で両手を鳴らすと、車が高速道路上で自動で車線変更をするテレビCMを覚えている人も多いだろう。
スカイラインは三眼カメラ(広角、標準、望遠)、ミリ派レーダー5基、超音波ソナー12基を装備し、車の前方や周囲の状況を正確に把握する。さらに地図メーカーとの共同開発により、車線の数や道路の勾配など高精度な3D地図データを車が判断材料として使っており、どこまでも自然な自動運転(レベル2)を目指している。
渋滞時の前走車の自動追尾では、1台前の車にやみくもに等距離でついていくのではなく、2台前の車との距離と加減速も把握し、自車の加減速がギクシャクしないように制御してくれる。
前の車が雑な加減速をするせいで、運転席に座っているにもかかわらず酔った経験をした方もいると思うが、スカイラインならばこれをセンス良くいなしてくれる。走る、曲がる、止まる、という車の基本動作を全て自動化する自動運転は、こうした運転アシストの一つ一つの機能が統合され、安全かつ可能な限り自然なフィーリングで制御される世界である。