誰だって老いたくないですよね。約16万人に生活期のリハビリを提供した経験をもつ理学療法士の上村理絵氏は著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)で、勝手に老化予防できる環境づくりを提案しています。今回はその一部を本書から抜粋して紹介します。
家族や他人の「決めつけ」が、あなたの体を弱らせる
加齢によって身体機能や認知機能が衰えていくのはやむを得ないことですが、それをさらに老化にまで進めてしまうような行動は避けなければなりません。しかし、高齢者本人も周囲の人々もあまり気づかず、無意識のうちに、そうした行動をしていることがあります。そんな行動の1つが、「決めつけ」です。
たとえば、私たちの施設に通われている利用者さんのご家族のなかには、こんなことを言う方がいます。
「おじいちゃんは聞こえてないから、代わりに私が聞きます」
確かにその利用者の方は会話の声が聞き取りにくくなっているのですが、まったく聞き取れないわけではありません。それなのに、同行者が「聞く必要はない」と決めつければ、本人は最初から聞く気を失ってしまいます。そして、「もう自分は聞かなくてもいいんだ」と考え、耳という聴覚器を働かせようとしなくなるのです。
知らない間に役割が奪われていないか確認しよう
「筋肉・関節・骨」にしても、「聞く・見る・感じる」などの感覚にしても、身体機能はきちんと使い続けることで衰えを防ぐことができます。
逆に、使わなくなれば、その機能は衰えていくばかりです。さらに、使わないことによって刺激が減るので、認知機能もおのずと低下せざるを得ません。
結果として、身体機能と認知機能がともに低下する可能性が十分に考えられます。
ある方も、「お母さんは足腰が悪いから、毎日の生活を送るのは大変だし、危ない」という娘さんの決めつけがあり、ご本人でも「高齢者は、いろいろと動くと危ないから、何もしないほうがいい」と決めつけていたのかもしれません。
知らず知らずのうちに自分の役割が奪われていないか、一度、最近の自分の生活と昔の生活を比べて、自分でやらずに他人に任せてしまっていることはないか、確認してみてください。
それが、さまざまな機能を改善する機会を取り戻すことにつながります。
上村 理絵
理学療法士/リタポンテ株式会社 取締役