誰だって老いたくないですよね。約16万人に生活期のリハビリを提供した経験をもつ理学療法士の上村理絵氏は著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)では、自然に老化予防できる環境づくりを提案しています。今回はその一部を本書から抜粋して紹介します。
老化予防のために「手」ではなく「目」を借りる
家族との同居がきっかけとなって肉体的な老化が進んだ人もいます。しかし、同居をすること自体を否定するつもりはありません。どうしてもできなくなったことに関しては、家族の手を借りることも必要でしょう。
また、家族が近くにいることには、プラスの側面もあります。それは、「目」が増えることです。何かしら急な体の変化があったときに、そばに人がいれば、いち早く気づいてくれます。
私たちは、リハビリを受けてもらう前日、ご利用者に電話をして、翌日のお迎えの確認を必ず行います。ところが、いつもなら電話に出てくれる時間帯に何度コールしても反応がなく、その後時間をおいて電話をしてもやっぱり状況は変わりません。気になって、近くに住んでいるご家族に連絡をし、かけつけてもらったところ、家の中で足を滑らせて転倒したため、その後立ち上がれずに、半日間動けずにいたそうです。ご家族が同居していたら、そのようなことがあっても、すぐに対応できていたでしょう。
高齢者にとって、まず増やすべきは、「手」ではなく「目」です。なんでもかんでも手助けする、手を出してしまう同居ならあまりおすすめしませんが、ただ見守るための同居ならおすすめすることができます。
もし同居をするのであれば、「手伝ってくれるのはありがたいけど、体を動かすためにも、自分のことは自分でやるから」と伝えておくことが大切です。
いざとなったときに見守ってもらう環境をつくろう
逆に、1人で暮らしている方は、「目」を増やすことを心掛けてください。
新聞や飲料水など、以前届けた商品が残されたままになっている場合には、毎日家まで宅配してくれる業者さんが地域の見守りネットワークに連絡してくれるというケースも多く見受けられます。そのような宅配サービスを利用するのも1つの方法であり、家族に決まった時間に連絡をしてもらい、定例的に安否の確認を行うのもよいでしょう。
今では、カメラを使って、遠隔地から様子を見守るシステムもあります。普段はできるだけ自分のことは自分でこなし、いざというときのために見守ってもらう環境を整えておくのが理想的です。
上村 理絵
理学療法士/リタポンテ株式会社 取締役