<前回記事>
【名医が教える腸活】健康&スリムな高齢者は“この腸内細菌”が多い!60代から積極的に摂りたい「身近な食材」とは?【アンチエイジング効果も】

「おなかにいい」だけではない、乳酸菌のスゴイ効果

乳酸菌は、私たちにもっともなじみの深い腸内細菌ではないでしょうか。多くの方が「おなかにいい」というイメージを持っているかもしれません。

イラスト:佐々木恵子 出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)
[図表1]乳酸菌
イラスト:佐々木恵子
出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)

しかし、乳酸菌の働きはそれだけではありません。実は100年以上前から健康寿命効果があることが見出されています。1世紀以上も前に「人間の老化は腸内細菌叢の乱れから起こる。乳酸菌がその乱れを整え、老化を遅らせる」という説がすでにロシアの免疫学者によって唱えられ、彼の研究はノーベル賞を受賞しました。現在も乳酸菌の抗老化作用と免疫増強の研究は、日進月歩で進んでいます。

たとえば、マウスや線虫に数種類の乳酸菌を投与すると寿命が延びる――すなわち、乳酸菌が老化に関わっていることが報告されているほか、乳酸菌が感染防御免疫を活性化し、老化を抑えるといった研究結果なども示されています。

それ以外にも、乳酸菌の一種、プラズマ乳酸菌*には驚くべき可能性があることがわかってきました。それがアンチエイジング効果です。

(*プラズマ乳酸菌〔Lactococcus lactis JCM 5805株〕)

早く歳を取ってしまう「早老マウス」にプラズマ乳酸菌を与えたグループと、そうでないグループを比較したところ、プラズマ乳酸菌を摂っていなかったグループは、皮膚が加齢とともに薄くなり、コラーゲンが失われていくのに対し、プラズマ乳酸菌を摂っていたグループは、皮膚の表皮が厚く保たれ、真皮の構造は若いままでした。この実験ではさらに、プラズマ乳酸菌を摂っていなかったマウスが、実験開始から82週の時点で16匹中約40%の6匹が死亡したのに対して、プラズマ乳酸菌を摂っていたグループでは16匹中1匹の死亡にとどまり、寿命を延ばす効果も示されました。

そのほか、乳酸菌の意外な効果として、ドライアイの予防も挙げられます。乳酸菌がつくる「乳酸」が腸内細菌を変化させることで、「また涙が出るようになった」という報告がされています。これは、長時間スマホやパソコンを見続ける人にも有効。このように乳酸菌の働きは多岐にわたっているのです。

乳酸菌を摂るなら、発酵食品などから「体質に合わせて」選ぶ

乳酸菌を摂ることができる食べ物なら、キムチ、納豆、ぬか漬けなどがおすすめです。

乳酸菌を摂ろうと考えて、ヨーグルトなどの乳製品を毎日食べている人もいると思いますが、日本人の75%は「乳糖不耐症」といって、乳製品に含まれる乳糖をうまく分解・消化できません。その結果、乳製品を摂ると下痢やガスに悩まされる人もいます。その場合は、乳糖を含まないサプリメントなどで乳酸菌を摂る方法もあります。

おなかに不調を抱える人には、日本で昔から食べられてきた漬け物、みそ、しょうゆ(ただし生きた乳酸菌を摂るなら非加熱製法に限る)といった発酵食品がいいかもしれません。ご自身の体質に合わせてさまざまな食品を試してみましょう。

出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)
[図表2]乳酸菌を増やす食材 出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)

江田 証 
江田クリニック院長、医学博士 
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡、大腸内視鏡で診察し、おなかの不調を改善することに生きがいを感じている消化器病専門医。愛する故郷の人々をたくさん胃がんで失ったことから医師を志す。1人でも多くの胃腸の不調で悩む日本人を救っていくことがミッション。『世界一受けたい授業』(日本テレビ系列)などテレビ、ラジオ出演多数。『腸を治す食事術』(新星出版社)など著作の累計出版部数は90万部を超え、中国、韓国、台湾などで6冊の本が翻訳・出版されている。