セキュリティの高さや自力でのメンテナンスが不要といった利便性から、終の棲家として分譲マンションを選ぶ人は少なくありません。しかし、当然ですがメリットがあればデメリットも存在します。『60歳からのマンション学』(講談社)より、60歳で住宅ローンを組み、新築マンションを終の棲家に決めた70代夫婦の事例をみていきましょう。著者の日下部理絵氏が解説します。
人生の終盤にこんな予想外のことが起こるとは…60歳で住宅ローンを組み、75歳で完済「幸せな70代夫婦」に降りかかった“まさかの災難”
買い替え?リフォーム?専門家に勧められた「2つの住宅ローン」
リフォームするにしろ、買い替えるにしろ、まとまったお金が必要だ。近所の不動産屋や先日までお世話になっていた金融機関にも相談したところ、リフォームローンだけなら、自宅マンションに抵当権をつけない「無担保ローン」があるという。借入額は上限があり期限は短い、住宅ローンと比べると金利が高いのが特徴だそうだ。
ただし、申込時の年齢制限と完済時の年齢制限があり、相談した金融機関では幸太さんの年齢では申し込みの年齢制限70歳未満に引っかかり難しいそうだ。しかし金融機関のなかには80歳以下を完済時の年齢制限に設定しているところもあるので、あきらめずいろいろな金融機関で相談して欲しいとアドバイスをもらった。
もし買い替えるなら「リバースモーゲージ型住宅ローン」をおすすめされた。簡単にいうと60歳以上を対象に「自宅の資産価値を活かして資金を借りるサービス」だそうだ。住宅金融支援機構により提供されている「リ・バース60」が有名らしい。
リ・バース60は高齢になってからの住まいの問題を解決するためのローンで、借り入れた資金の使い道は住まいに関するものに限定されている。
なお、リバースモーゲージは、自宅マンションを担保に資金を借り入れし、生きているうちは利息のみを返済する。元金は亡くなった後に、担保不動産を売却して返済するか、相続人が返済する仕組み。余裕があれば元金の繰り上げ返済も認められている。この仕組みをベースにアレンジされたのが、リバースモーゲージ型住宅ローンだという。
また、「リースバック」というものもあるという。リースバックは、所有している自宅マンションを運営会社に売却して、売却後も自宅マンションに賃貸住宅として住める仕組みだという。以前借りた時とは、随分と変わり、さまざまな選択肢が増えたものだと幸太さんは感心した。
騒音が止むのが1番だが…「予想外の事態」に溜息
他力本願ではあるが騒音宅の引っ越しや静かになることを願いつつも、警察に相談や裁判したほうがいいのか、荒立てずに防音室や防音仕様にリフォームしたほうがいいのか。
思い切って自宅マンションを売却するか。いつか戻ってくることを前提に一旦賃貸に住み替えるか、一般的な賃貸が借りられない場合は、URやJKK東京なども視野に入れるのか。
売却だけでなく他のマンションに買い替えるなら、リバースモーゲージ型住宅ローンを活用するか。その場合、相続人が不足分の返済義務がある「リコース型」か、返済不要な「ノンリコース型」か。どの金融機関で借りるのか。考えれば考えるほど、悩みが尽きない。
正直なところ住宅ローンさえ完済すれば、老後は万全だと思っていた。毎月の返済がない分、趣味や旅行にもお金を回せるとも話していたし、住み慣れたわが家で夫婦穏やかに人生の最後を過ごせればとも思っていた。人生の終盤にこんな予想外のことが起こるとは……。
幸い地価が高騰しており、いま売れば買った時よりも高く売れるという。また60歳から借りた住宅ローンが完済済みというタイミングなのは、まだまだ私たち夫婦は運が良かったのかもしれないと、溜息をつく幸太さんだった……。
日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表