家族構成の変化や転職など、さまざまな理由から「いま住んでいるマンションを買い替えたい」と考えている人は少なくないでしょう。ただし、買い替えを検討する際は「覚悟を決めて」取り組まなければ、専門家であっても大変に苦労すると、『60歳からのマンション学』(講談社)著者の日下部理絵氏はいいます。日下部氏自身の経験も交えながら、マンションの買い替えで気をつけたいポイントをみていきましょう。
買い替えは「覚悟を決めて」…専門家でも“冷や汗もの”なマンションの「購入」と「売却」気をつけたいポイント
マンションの買い替えは「売り買い同時進行」が理想だが…
マンションの買い替えは、売りと買いのタイミングをあわせるのが難しく何からはじめたらいいか、悩む人も多いのではないか。
マンションを買い替える時は、ほぼ同じタイミングで自宅マンションを売却し、新居を買うのが理想的である。これを「売り買い同時進行」という。しかし、現実的には同時進行はとても難しい。
それは、売却と購入のタイミングを無理にあわせようとすると、割安な価格で売却せざるを得なかったり、新居をじっくり探せない恐れがあるからだ。しかも、住宅ローンなどの資金繰りも考えなければならない。
そのため実際には、無理に同時進行せずに、「売り」か「買い」どちらかを優先して進めるのがおすすめである。売却を優先するのを「売り先行」、購入を優先するのを「買い先行」という。新しく住むところを優先するなら買い先行だが、住みながら売るなら売り先行となる。
「売り先行」…売却代金を新居購入にあてられるが、空き部屋より売りにくい
「売り先行」の場合、マンションを売却した代金を、住宅ローンの残債があるなら返済にあて、余裕があれば新居の購入資金にあてられる。売却代金が確定してから新居を購入するので、予算がわかりやすく資金繰りがしやすい。
マンションを売却しないとローンの残債を返済できない場合、必然的に売り先行を選ぶことになる。なお、築古や駅遠など人気物件ではない場合は、売り先行で焦らず売却活動をするのがおすすめだ。
しかし、住みながらの売却は、空き部屋より売りにくく、次に住むところの心配もある。ただ余程の人気物件でもない限りすぐ売れるケースは少ないので、売却活動をしつつ、次の物件の候補を探しておくとよいだろう。
資金繰りからすると、売却できるまでは新居の契約は現実的ではないが、売却の目処が立ち次第、すぐに購入を決断できるよう候補物件を絞り込んでおけば、売るタイミングと買うタイミングをあわせられる可能性がある。タイミングがあわせられれば、仮住まいなどの費用を抑えることができる。
一方で新居が決まる前にマンションが売れてしまった場合、引き渡し時期に余裕がなければ、新居が決まるまでの間は賃貸などで仮住まいをしなくてはいけない。そのための賃貸物件探しや2度の引っ越し費用など、手間や費用がかかる。