「運のいい人」は、生まれつき決まっているわけではありません。生活していく上での考え方と行動パターンによって決まります。では、どのようにしたら「運のいい人」になれるのでしょうか?そこで本稿では、医学博士の中野信子氏による著書『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)から一部抜粋して、いま、最注目の脳科学者がつきとめた運のいい人だけがやっている「思考」と「行動」を解説します。
運のいい人はプラスの自己イメージをもつ
「自分は運がいい」という思い込みとセットにしてもち合わせたいのが、プラスの自己イメージです。
何か課題を与えられたとき、試験に挑戦するとき、スポーツの試合に出るときなどにプラスの自己イメージをもちます。するとそれが、結果によい影響を与えるのです。
たとえば会社で、難易度の高い、しかも重要なプロジェクトを任されたとしましょう。そんなとき、自分に対するよいイメージを思い浮かべるのです。
前回のプロジェクトも成功できたのだから、今回も成功できる。
むずかしいプロジェクトを任されたということは、日ごろの努力と成果が認められたということだ。
難関といわれる試験にも自分は合格できたのだから、今回も大丈夫! などというように。
あるいは、自分ならやれる、私ならできないはずがない、などでもいいのです。
プラスのイメージに特別な根拠はいりません。根拠のない自信さえあればいいのです。
そのほうが、プロジェクトが成功する確率が高まるのです。
このことを証明する実験が、イギリスで行われたメンタルローテーションタスクの実験です。
メンタルローテーションタスクとは、ひとつの図形(平面の図形の場合もあれば、立体の図形の場合もあります)が示され、それと同じ形のものを羅列された5、6個の図形の中から選ぶ、というもの。羅列された図形のほうは回転して示されているために、ひと目で同じ図形を見つけるのは至難の業です。
メンタルローテーションは日本語で「心的回転」という意味ですが、文字どおり、元の図形を見つけるためには、頭の中で図のイメージを思い浮かべて回転させる必要があるのです。そしてこのメンタルローテーションは、一般的に男性のほうが女性より早くしかも正確に答えを出せる、とされています。
この実験では、アメリカ人の大学生にメンタルローテーションテストをやってもらうのですが、テスト前に簡単なアンケートが実施されました。実は、このアンケートがこの実験の肝なのです。
そのアンケートで性別の質問をされた場合、女子学生の正答率は男子学生の64%でした。一方、アンケートで自分の所属大学を質問された場合、正答率は男子学生の86%まで上がったのです。
被験者の多くは有名校のエリート学生でした。アンケートで所属大学を答えることで、私は有名大学のエリート学生だというプラスの自己イメージがわき、それがテストによい影響を与えたのです。
このように、プラスの自己イメージはパフォーマンスに直接影響を与えます。
そこで、何かに取り組むとき、何かに挑戦するときには、マイナスの自己イメージはなるべく排除する努力をして、できるだけプラスの自己イメージをもつようにするのです。
そして、このプラスの自己イメージは、「運がいい」という思い込みとセットにするとよいサイクルが回ります。
「運がいい」という思い込みとプラスの自己イメージをもっていると、新しい挑戦や課題に成功しやすくなります。成功すると「やっぱり運がいい!」と思える。自己イメージのレベルも上がるので、次の挑戦もしやすくなります。
また、仮に次の挑戦には失敗してしまったとしましょう。先ほども書きましたが、「運がいい」と思っている人はここで反省ができます。その反省から次への努力が生まれ、次の挑戦で成功できたとしたら、またよいサイクルに戻ることができるのです。
中野信子
東日本国際大学
特任教授/医学博士