睡眠時間をとっているのにもかかわらず「なんだかスッキリしない」「寝た気がしない」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか? そこで本稿では、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏による著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)から一部抜粋して、睡眠の質を良くするための方法を解説します。
セロトニンを増やす方法
では脳のセロトニンを増やすにはどうしたらよいのでしょうか。それには脳のセロトニンを合成する遺伝子のスイッチをオンにする必要があります。そのために必要なのが、朝起きたときに太陽の光を浴びることです。
概日リズムのところで、体内時計は地球の時計よりも約1時間長いといいました。
つまりヒトの体内時計に従って生活していると、生活の時間がどんどんズレていくことになります。そのため体内時計は毎日リセットしなければなりません。
この体内時計のリセットが、太陽の光を浴びることです。京丹後市の高齢者は、それを毎朝、無意識のうちに行っています。
でも都会に住む人はなかなかそれができないので、朝起きたら窓を開けて太陽の光を浴びることが大事です。
太陽の光を浴びることによって、脳のセロトニンを合成する遺伝子がオンになります。
つまり朝の太陽の光を浴びることによって、脳のセロトニンが増えてくることになるのです。
京丹後市の高齢者は、朝起きたら、そのまま外に出て畑仕事をしたりしますから、その間にセロトニンが増え、夜になるとメラトニンに変わります。つまり質のよい睡眠がとれるというわけです。
睡眠の質を改善するという機能性表示がある乳酸菌飲料があります。そのメカニズムは、ストレスを改善することによって、睡眠の質をよくするというもののようです。
ストレスがあると腸内環境が悪化するというのは、九州大学大学院の須藤信行先生(九州大学病院心療内科教授)たちが研究しています。ストレスによって腸内フローラが変化したり、逆に腸内フローラによってストレスが調整されることがだいぶ明らかにされてきました。
ストレスがあると、眠れなくなったり、食欲がなくなったり、便秘や下痢を起こしやすくなることもわかっています。ですから、腸内フローラを改善すれば、体のいろんなところで効果が出てきます。
私は消化器内科で外来患者を診ていますが、患者さんたちの腸内細菌も調べていて、そこからもいろんなことがわかってきています。その1つに、病気と睡眠の質と腸内細菌の関係があります。
今後は、さまざまな病気が原因で睡眠の質が悪くなることや、そのときの腸内フローラの状態などが解明されてくると思います。
もう1つ、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患と睡眠の質に関するデータがあるのですが、こうした病気の患者さんは睡眠の質が悪化している印象があります。
腸内フローラのエントロタイプのDタイプも、炎症性腸疾患が多いことがわかっています。またDタイプにはうつの人も多いので、ストレスや睡眠の質とも関係している可能性があります。
内藤 裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科
教授/医学博士