取引先や商談の場で、部下の言動にハラハラしてしまった……そんな経験のあるミドル・シニア世代も多いでしょう。いったいなぜそのように感じてしまうのか、『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)著者で人材開発コンサルタントの田原祐子氏が具体例を交えて解説します。
ミドル・シニア世代が、思わず「部下の行動にハラハラしてしまう」理由【人材開発コンサルタントが解説】
お客様からのクレームも、知識の蓄積から対処法を予見
■ケース2.あなたのお客様が個人の場合
たとえば、あなたのお客様が個人の場合なら、こんな具合です。
あなたの目から見ると、「部下は、弊社商品の○○という1点に集中しているが、お客様は、別の部分に魅力を感じているかもしれないことを、わかっていないな……」と、商談の先行きが心配になっているかもしれません。
きっと、ご自身が説明するなら、長年の営業によって蓄積した経験から、こんなお客様には、自社商品の別の部分、○○をメインに商談を進めていくことでしょう。
自分の思い込みで盲目的に商談を進める部下のふるまいが気になるのだとしたら、その視点はかつてご自身が、痛い経験を通じて体得したことかもしれません。
これらも、あなたが多くの経験を通じて、「多角的な視点でサービスを捉えているからこそ、そのお客様に合ったサービスを見極められる」という、無意識に蓄積してきた貴重な経験知です。これらは、あなたの経験知の中の「②実践スキル=業務経験」です。
■ケース3.あなたがモノをつくる仕事の場合
たとえば、あなたがモノをつくる仕事をなさっている場合なら、こんな具合です。
あなたが、このクレームを聞いたとき、故障の部位や内容から、「ああ、このクレームなら、△△と××が原因だろう」と、おおよその見当がついたことでしょう。長年の経験を通じて、「この部位が壊れるなら、△△と××が関連している」という原因と部位の関連性を見抜き、対処法を予見できているはずです。
一方、部下は故障の原因について、見当はずれの見立てをしているわけです。これらは、あなたの経験知の中の「①専門分野=知識・領域」です。
いかがでしょうか。じつは、これら3つのケースのすべてが、あなたの中に潜在している強みである経験知があれば解決できるのです。
このような経験の蓄積で醸成される、貴重な経験知は、長年多くの経験を積むごとに暗黙知へと深化・進化していきます。
経験知は、長年あなたが苦労して経験した失敗や成功が、すべて無形の資産として蓄積された、かけがえのない「極上の宝物」です。
田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者