「たくさんもらったからどうぞ」「作りすぎちゃったからどうぞ」と、友人や知人に何かの「お裾分け」をすることも、またはされることもあるでしょう。この「お裾分け」の行為には、2つの良い作用がある、と作家の有川真由美さんは言います。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、詳しく見ていきましょう。
“お裾分け”の持つ「すごい効果」とは?
季節の果物をたくさんもらったり、お漬物を大量に作ったり、旅先でめずらしいお菓子をいろいろ買ってきたりしたら、近くに住む友人たちに“お裾分け”をします。
お裾分けはわざわざ用意したり、おもてなしをしたりする必要がないので、気がラク。「ついでに人にも喜んでもらおう」というだけで、お返しを期待していないけれど、友人たちもなにかあったときにもってきてくれます。「煮物をいっぱい作ったから食べて」「お中元で大量にもらった洗剤、いる?」という具合に。
そんなちょっとしたやさしさは身に染みるもの。お惣菜をもらったときは、容器にお菓子を入れて返したり、こちらのお中元もお裾分けしたりしていると、自然に関係が深まって“生活互助会”のような感覚になってきます。
職場でも「実家から田舎のお菓子を送ってきたので食べて」「じゃあ、お返しに……」と分け合うことがあれば、相手の背景も垣間見えて距離がぐっと縮まるもの。言葉だけではなく物を交換すると、不思議と安心感も生まれるのです。
お裾分けには、人間関係を深める効果のほかに、もうひとつ意味があります。
お金を遣わなくても、お裾分けや物々交換で「物を手に入れられる」という原始的な経済活動が、お金の不安を多少なりとも払拭してくれるように思うのです。
田舎に移住したとき、毎日、ご近所さんから食べ切れないほどの野菜や果物をいただいたものでした。なにかと家に出入りする人がいると、「蚊取り線香が必要だね。家にたくさんあるから、もってくるよ」「どくだみで作った虫刺され薬もあげる」と、生活用品がそろうので、当時はお金をまったく遣わない日が続いていました。
都会では「ゼロ円生活」はムリでも、ときどき物々交換をして貨幣経済から少しだけ解放されると、心がふっとラクになります。お裾分けの習慣は、お金の不安を軽くしてくれる一助になるはずです。
有川 真由美
作家