「遠回しな質問」で外堀を埋めてくる調査官

小百合:税務調査では、どんな質問をされるんですか?

相続ソムリエ:当たり前ですが、「2億円をどこに隠しているんですか」といったストレートな質問はされません。「ご主人はどういうものにお金を使っていましたか」などと遠回しに聞いてきます。

そのときに相続人が「ギャンブルは一切しません」とか「ほとんど趣味もないので、散財もしない人でした」などと答えると、調査が進んだ段階で「我々の計算ではAさんの資産は3億円近いはずですが、1億円しか申告されていません。2億円はどこにいったのですか」と追及されるのです。既に散財やギャンブルの言い訳は封じ込まれているので、逃げ道がなくなっています。

桜:すごいテクニック! どれだけ隠そうとしても、きっとばれちゃうわね。

相続ソムリエ:すごいですよね。最初は被相続人について「生前はどんな方でしたか?」といった質問でやわらかくスタートしますが、ちょっとした雑談に見えても無駄な質問はほとんどありません。質問の背景にはちゃんと意図があるのです。

また、調査官の1人が質問をして、もう1人がメモを取るなどといった役割分担があります。実はこのとき、相続人の表情の変化も漏れなく記録されているんですよ。

綾子:高度な心理戦が繰り広げられているんですね。

北井 雄大
税理士