年間約10万件の相続税の申告件数のうち、税務調査が入る件数は「5件に1件」。意外と身近なものであり、それゆえ、相続税の申告の際には「税務調査を受けることを意識しながら準備を進めていく必要がある」と、税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。
〈5件に1件〉が税務調査の対象に…!「何にお金を使っていましたか?」の回答から“すべてを暴く”調査官の〈すごいテクニック〉【税理士が解説】
「遠回しな質問」で外堀を埋めてくる調査官
小百合:税務調査では、どんな質問をされるんですか?
相続ソムリエ:当たり前ですが、「2億円をどこに隠しているんですか」といったストレートな質問はされません。「ご主人はどういうものにお金を使っていましたか」などと遠回しに聞いてきます。
そのときに相続人が「ギャンブルは一切しません」とか「ほとんど趣味もないので、散財もしない人でした」などと答えると、調査が進んだ段階で「我々の計算ではAさんの資産は3億円近いはずですが、1億円しか申告されていません。2億円はどこにいったのですか」と追及されるのです。既に散財やギャンブルの言い訳は封じ込まれているので、逃げ道がなくなっています。
桜:すごいテクニック! どれだけ隠そうとしても、きっとばれちゃうわね。
相続ソムリエ:すごいですよね。最初は被相続人について「生前はどんな方でしたか?」といった質問でやわらかくスタートしますが、ちょっとした雑談に見えても無駄な質問はほとんどありません。質問の背景にはちゃんと意図があるのです。
また、調査官の1人が質問をして、もう1人がメモを取るなどといった役割分担があります。実はこのとき、相続人の表情の変化も漏れなく記録されているんですよ。
綾子:高度な心理戦が繰り広げられているんですね。
北井 雄大
税理士