お湯の太さを意識しながら注ぐ

注湯するときのお湯の太さは、「流量」や「流速」という言い方もします。

注ぐお湯が太ければ、それだけ単位時間当たりのお湯の量は増えます。逆に、細く注げば単位時間当たりのお湯の量は少なくなります。

お湯の量が増えるということは、それだけ勢いよく粉面にお湯が流れ込むことになるので、ドリッパー内で意図しない撹拌が起こったり、粉面の1部に穴が開くような現象が起こったりします。そうなると、粉全体からまんべんなくおいしい成分を引き出すことはできず、薄い液体のまま、下のサーバーへと落ちていく分も多くなります。

それならば、お湯は細く落とすほどいいのかというと、そうとは言いきれません。お湯が細すぎると、抽出に時間が長くかかってしまって余計な成分が抽出されたり、撹拌が起きにくくて不均一な抽出になったりします。

お湯は太すぎず細すぎず、ドリッパー内で適度に撹拌が起こって、重力で自然に滴下していく範囲でコントロールするのがポイントになります。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
【図表3】粉に適度な撹拌が起こるようにお湯を注ぐ 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋

お湯を落とす高さもポイント

ドリップポットからドリッパーにお湯を落とす高さも重要です。

まず、位置が高すぎると、粉面の狙ったポイントにお湯を落とすことが単純に難しくなります。また、高い位置から落ちていく途中で、空気抵抗によってお湯が水滴状に広がってしまい、粉面の1点ではなく、やや広い範囲にお湯が当たってしまいます。

一方、低い位置から落とす場合は、粉にやさしく撹拌を起こすことができます。粉面の狙ったポイントにお湯を落とすのも容易になりますが、ポットの注ぎ口の長さや形によってはコントロールが難しくなる場合があります。

私が普段ペーパードリップを行う際は、粉面から10〜20センチ程度の高さで、安定してお湯を注げる体勢を取りながらコントロールするようにしています。フレーバーを出すために強めの撹拌を起こしたいときは高めの位置から、逆に深煎りの豆を使う場合など、撹拌をあまり激しくしたくない場合は、やや低めの位置から細めの流速でやさしく落とすなど、目的に合わせて使い分けています。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
【図表4】お湯を落とす高さによって粉の撹拌が変わる 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋

お湯を注ぐ角度はできるだけ垂直に

ポットから注ぐお湯の角度は、粉面に対してできるだけ垂直に近い状態が理想です。

粉面に対して入射角がありすぎると、それだけ狙った場所に撹拌を起こすことが難しくなるだけでなく、水流に勢いがつきすぎて、手前から奥に向かって粉面が崩れたりえぐれたりしやすくなります。

お湯を垂直に近い状態で落とすためには、お湯の勢いを強くしすぎないこと。軽く傾けた状態で、注ぎ口から出たお湯が自然に落下するようにコントロールします。そのためにはポットの中のお湯は、適切な量を入れておく必要があります。

ただし、お湯が多めに入ったポットは重くなります。その重さを支えられないと、途中で疲れてしまって、望み通りの注湯ができなくなります。そんな場合は左手でポットのふたを押さえたり、可能ならばポットの下に左手を添えたりできると、安定しやすくなります。あとは、きれいに垂直にお湯を落とせるように、空のドリッパーに向かって練習を重ねるのも上達の早道です。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋
【図表5】お湯は垂直に近い角度で落とすのが理想 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より抜粋

畠山 大輝

Bespoke Coffee Roastersオーナー

コーヒー焙煎士/コーヒー抽出士