ペットへのケア方法について、西洋医学的な療法が主流となっている現代。しかし飼い主は西洋医学と東洋医学、両方の「いいとこ取り」をしていくべきだと、現役獣医師で『愛犬と20年いっしょに暮らせる本 いまから間に合うおうちケア』の著者である星野浩子氏はいいます。2つの医学を比較しながら、より効果的なワンちゃんのケア方法をみていきましょう。
鍼灸で気血がめぐると食欲も戻る
腎臓の病気は高齢のワンちゃんに非常に多い病気です。
腎臓が悪くなると、ワンちゃんはとてもつらいので、なかなかごはんを食べません。
食べないと体力がなくなるので、飼い主さんはなんとか食べてほしいと、あれこれ工夫して一生懸命になって食べさせようとします。それでも食べなければ、点滴で栄養や水分を入れることになります。
こういった腎臓病との闘いは、ワンちゃんにとっても、飼い主さんにとっても、ほんとうに大変です。
でも、そうしたワンちゃんでも鍼灸をすると、気血がめぐりはじめて、食欲が戻ることがよくあります。
飼い主さんにとって、ワンちゃんが病気になったとき、ごはんが食べられるようになるのは希望そのものです。
ごはんが食べられれば、内臓が動きはじめます。栄養が体内に行きわたって、起き上がる力も出てきます。起き上がって動ければ、ぼんやりしていた頭も働きはじめます。排泄ができれば、体内の余分な水分や悪いものは外に出ていきます。
こうして、食欲が戻ったことをきっかけに、体全体が元気になるワンちゃんを私はたくさん診てきました。
どこかがよくなれば、連鎖的に全体がよくなるのが東洋医学です。
高齢になってもタンパク質はしっかりとる
ワンちゃんが高齢になってくると、「できるだけ低タンパクのフードを選ぶように」「手づくりごはんの肉や魚などのタンパク質を減らすように」といわれています。
年齢とともにしだいに機能がおとろえる「腎臓に負担をかけないため」です。西洋医学では、まだ機能している部分にできるだけ負担をかけないようにするために、タンパク質を減らすことがよいとされるのです。
でも、タンパク質は筋肉、骨、血液をつくるうえで欠かせない栄養素です。タンパク質が不足すると、筋肉が落ちて、体力も落ちてきてしまいます。
東洋医学では、残っている部分にむしろ栄養を与えて元気にして、しっかりした体をつくり、体力を維持しようとします。
最近は、人間も「高齢者はもっとタンパク質をとりましょう。そうでないと、筋肉量が減って、体力や抵抗力が落ちてしまいますよ」といわれていますね。
高齢のワンちゃんについても、それと同じことがいえます。
ですから、私はそれぞれのワンちゃんに合わせて、必要量のタンパク質をしっかりとるようにアドバイスをしています。そのほうが長い高齢期をずっと健康的に過ごすことができます。
タンパク質源としてとくにおすすめしているのは豚肉です。
「ワンちゃんにお肉をあげるならささみ」という考え方がなんとなく定着している感があるので、意外に思われるかもしれません。でも、豚肉はエネルギーを上げて、若々しさを保つのにとてもよい食材です。