生きていくうえで欠かせない「お金」だからこそ、果てない物欲に身を任せていては、一生満足できず、将来への不安も尽きることはないでしょう。そんな状況への打開策として、作家の有川真由美さんが提案するのは「必要最低限のお金があれば生きていけると考えること」。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、お金との向き合い方について詳しく見ていきましょう。
「支払うお金」を、それを得るために「働いた時間」に換算する
「物を買うというのは、稼いだ金で買っているのではなく、労働をした時間で買っているのだ」と言ったのは「世界一貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイのムヒカ元大統領でした。
2012年、地球サミットでのムヒカ元大統領のスピーチは大きな反響を呼びました。古代ローマの哲学者セネカの「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」という言葉を用いて、経済発展のあり方や、ライフスタイルを見直すべきだと提言したのです。
人びとは、家や車のローンを払うためや、さまざまな物を買うために働き続けて、あっという間に一生が終わってしまう。本来は、愛、人間関係、子育て、友だち、必要最低限のものをもつことなど、幸福であることをもっとも大切にすべきだと。
私もそんな考え方に共鳴して、ムヒカ元大統領の妻、国会議員でもあるルシア・トポランスキーさんを取材。夫妻が収入のほとんどを慈善団体に寄付して、農業をしながら質素に暮らしている様子を見て、「むやみに欲しがらないことは品格であり、時間と心の自由を手に入れること」なのだと、すとんと腑に落ちたのです。
それから「支払うお金」を「働いた時間や労力」に換算する習慣がつきました。
私たちが1万円のものやサービスを買うとき、時給1,000円の人なら10時間、10万円のものには約12日半の労働時間を差し出していることになります。「この商品に、それだけの価値があるのか」と考えると、無駄遣いせず、ほんとうに価値のあること、人や自分を幸せにすることに遣いたいと思うようになるのです。
お金とは単なる交換の“道具”ではなく、“意味”があります。苦労して得たお金は大事に遣いたいし、「あぶく銭は身につかない」というように、浪費しがちです。支払うお金を、時間や労力に換算する習慣は、欲しがらない習慣にもなるのです。