財産が一定以上ある人にとって、相続対策として有効とされるのが「マンション節税」。しかし、「マンション節税を考える際は、単純に現金を別の資産に変えるだけでなく、事業であるという意識が必要」と税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。
相続税評価額が〈3億円→1億3,000万円〉に!超優秀な相続対策「マンション節税」だが…知らないと大切な財産を失う「落とし穴」とは【税理士が解説】
【登場人物】
相続ソムリエ:悩める家族に相続のアドバイスを贈る、相続のプロフェッショナル
潤一郎(80歳):春樹の父親
小百合(76歳):潤一郎の妻
春樹(52歳):潤一郎・小百合の長男。妹が1人いる
綾子(50歳):春樹の妻
桜(23歳):春樹・綾子の娘。潤一郎・小百合の孫
「マンション節税」は相続対策として有効?
綾子:「マンションを建てると節税になる」と聞いたことがありますが、本当ですか?
潤一郎:そうだ、ワシの友人もこの前マンションを建てたのだが、「相続対策だ」と言っておったな…。
相続ソムリエ:財産が一定以上ある人は、マンション節税のスキームが相続対策として有効です。
現金資産が3億円あるケースで考えてみましょう。この現金をそのまま金庫にしまっておいたり、銀行に預けておいたりすると、相続税評価額はあくまで3億円です。100%の評価で相続税が課税されるのです。一方、3億円を使ってマンションなどの賃貸不動産を建てると、相続税評価額は固定資産税評価額から借家権割合を差し引いた金額で計算されます。賃貸不動産であればおおよそ42%に下がります。
なお、固定資産税評価額は市区町村役場が計算します。建物の材質や構法によって変わるものの、建築費の60%前後と想定しておくといいでしょう。
春樹:不動産に変えるだけで、相続税評価額を1億7,000万円近くも下げられるんですね。同じだけの資産があっても、どのような形で残すかによって相続税額が大きく変わるわけか。
相続ソムリエ:ただし、マンションを建てるには時間がかかりますから、早い段階から計画的に進めておく必要があります。