まだ使えるうちに交換するほうが、実は「割安」

このように、屋根材と下地のルーフィングの寿命をトータルで勘案すると、20~30年の間に葺き替えを行うのが望ましいと言えます。アスベスト含有品を撤去する際には処分費が割高になりますが、下地が健全ならカバー工法といって、今ある屋根材を残したまま上から新しい屋根材をかぶせる割安な方法を選択することも可能です。

まだ使えるうちに屋根材を交換するのはもったいないと思われるかもしれませんが、限界まで使って雨漏りを発生させてしまったら、下地の修理代が加わるだけでなく、十分な検討もできないままに焦って工事を発注してしまうなど、結果的に高くつく場合が多いのです。

金属屋根は、昔はトタンと呼ばれる材質が一般的で、鉄板に防錆のための亜鉛めっきが施されています。トタンの劣化の原因は錆びですが、この亜鉛めっきが傷むと錆びやすくなるため、一般的には10年目までには最初の塗装をし、以後5~8年毎に定期的に塗装を行うことで錆びを防ぎ、延命していくことができます。

90年代からはガルバリウム鋼板が主流となり、亜鉛に加えてアルミとシリコンのめっきを施すことで、トタンより錆に強い材料となりました。

ガルバリウム鋼板のめっきの寿命は25年程度ともいわれており、15年目頃から塗装によるメンテナンスを行っていけば、より安心です。金属屋根は丁寧に塗装を行うことで、錆びから守り長持ちさせることができますが、やはり下地のルーフィングの寿命に合わせ、30年程度が葺き替えの目安となります。

こちらも下地が健全なうちは、今ある屋根材を残したまま上から新しい屋根材をかぶせる重ね葺きやカバー工法など、割安な方法を選択することができます。

リフォームで金属屋根を採用する場合は、2016年に登場したスーパーガルバリウム(SGL)鋼板がお勧めです。こちらはガルバリウム鋼板を更に耐久性を高めたもので、より長寿命となっています。20年目頃から塗装によるメンテナンスを行っていけば、建物の寿命と共に、相応の耐用年数が期待できます。

このSGL鋼板を使用する場合は、超高耐久な屋根材の寿命に合わせ、下地のルーフィングも超高耐久仕様にしておきたいところです。

ここで一つ金属屋根の注意点として、金属は沿岸部では特に錆びやすい性質があることにご注意ください。このため、沿岸部にお住まいの方は、前述の目安よりも短い間隔で塗装によるメンテナンスを行うことをお勧めします。

それぞれの屋根材の特徴を見てきましたが、概ね「屋根の寿命は30年」といえそうです。20年を過ぎた頃から天井の雨漏り跡に注意し、30年を迎えるまでには葺き替える、と考えておくといいでしょう。

また、今は下地のルーフィングにも耐久性の高いものが開発されていますので、屋根材と下地材を上手に組わせることで、葺き替え後はより長寿命な屋根にすることが可能です。あと何年この家に住むのか? という計画と共に、予算に応じてルーフィング・屋根材の組合せを慎重にご検討いただけたらと思います。




高橋 みちる
リフォームコンサルタント
アールイーデザイン一級建築士事務所 代表