長年住んでいる自宅に劣化が見られたタイミングで、リフォームを検討する人は多いのではないでしょうか。しかし、多額の費用がかかるリフォームは「頼む順番やタイミングで損している」ケースが多いと、一級建築士でリフォームコンサルタントの高橋みちる氏は言います。高橋氏の著書『やらなければいけない一戸建てリフォーム』より、「正しいリフォーム」を実現するために大事なことをみていきましょう。
「リフォーム」と「建て替え」、どっちが有利?
リフォームで家の寿命を延ばすことは可能ですが、実際いくらでもリフォームにお金をかけられるという訳ではないですよね。リフォームをしたけど後から考えたら建て替えた方が安かった、なんていうことになっては残念です。
それでは築30年問題とも言える「リフォームか建て替えか?」という問題を解決するために、まずはそれぞれのメリット、デメリットを整理してみましょう。(図表1)
建て替えは、最も簡単に最新設備・最高性能の家を手に入れる方法ですが、今まで家として使えていた部分も全て捨ててしまうため、ロスが大きい=費用が高いということになります。
一方でリフォームは、必要なものだけを交換し、使えるものは残すことができるため、無駄が少ない=費用を抑えることができます。しかし、適切な修繕や家の性能を上げる方法などを知らないと、最良の状態を保つのが難しいと言えます。
リフォームの最大のメリットとも言える「費用を抑えること」について考えてみましょう。
まず、一つ一つの工事単価は、実は建て替えよりもリフォームの方が高額です。全てを撤去して新規に組み立てるだけの建て替えより、部分部分を作り直すリフォームの方が、手間がかかるからです。
ではなぜリフォームで費用が抑えられるのかと言うと、「使えるものを残せる」からです。つまり裏を返せば、使える部分が少なかったり、追加するものが多すぎたりすると、リフォームの方が建て替えより高くつく場合もあるということです。(図表2)
高額な費用がかかる「リフォーム内容」とは?
具体的にどのようなときにリフォームが高くつきやすいかというと、
1.雨漏りやシロアリ被害などにより広範囲の構造材を入れ替える必要がある
2.間取りやデザインを大きく変更するため、作り直しが多い
3.性能が低すぎるため追加する部材が多い(耐震性能不足や断熱材が入っていないなど)
1.は正しくメンテナンスしていくことで、ある程度大きな被害を防ぐことは可能です。また2.はリフォームプランの打合せ時に予算についても設計士とよく打合せ、コストを抑えるプランを作るという方向で回避できます。
しかし3.は、コストを抑えるためには性能を上げることを断念することになるか、性能アップを叶えるならば建て替えた方が安いということになりかねません。
つまり、今の家がどの程度の性能を持っているのか? というのはリフォームを考える上で大変重要な要素となるのです。