遺言は「公正証書」がベストだが…自筆なら「保管制度」の活用を

公証役場で証人2名立ち合いのもと(立ち合い人を連れてこられない場合、役場の人を頼めるが、1人1万5,000円程度の謝礼が必要)で作る「遺言公正証書」は財産額によるが、だいたい5万円ほどかかる。

しかしこれは家庭裁判所の検認手続きが不要になるし、公証人が遺言者に面談し作成しているため、親族間の争いが起こりにくい。

公正証書を作らないまでも、令和2年1月10日から法務局が実施している「自筆証書遺言」を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度(費用は3,900円)」もそれなりに有効らしい。

「自筆証書遺言は家庭裁判所に検認の申し立てをし、家庭裁判所から相続人全員に連絡があり、筆跡が本人のものであるかの確認をされるのですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すると、この検認の手続きをカットできるのです」

そこには、何々を誰にという遺言のほか、さまざまな「思い」を書き込めるのだという。「ある方のケースですが、財産を狙っていた冷たい親戚に対して、『おまえらは俺に会いにも来なかったくせに、金ばかりほしがって。恥を知れ恥を』と書いてあったんです。そこまで書かれて、それでもほしがる人はいない」

結果、財産は譲渡したい家族に100パーセント譲渡できたのだという。

遺産相続と財産放棄

“見えない資産”を守るために…「ID・パスワード」はあらかじめまとめて

18年前母が亡くなったとき、残された不動産の評価額5,000万円以下は相続税がかからなかった。いまは3,600万円以下が非課税だという。

「遺産総額についてですが、基礎控除5,000万円+相続人1人につき1,000万円の控除がありました。平成27年1月から、基礎控除3,000万円+相続人1人につき600万円の控除に変更されたんです」

ネットバンキングやオンライン投資などが残される場合もある昨今、エンディングノートにIDやパスワードを書いておいてもらうのは、必須といえよう。

わからなかった場合でも、(法定)相続人であることが証明できれば、預貯金口座などの遺産は相続できる。

必要書類は、

①銀行の相続届、

②遺産分割協議書か遺言書、

③相続人の確認ができる戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本、

④法定相続人全員の印鑑証明書か、遺言により預金を継承する人の印鑑証明書。

残されたお金は、通常配偶者が2分の1、子が2分の1。子ども2人なら4分の1ずつもらえることになる。

「愛人の子でも、平成25年12月5日の民法改正後、同様に相続できることになったんです。離婚した場合も、前妻の子には同等の相続権がある」

しかし、借金しか残さなかった場合はどうだろう。

「自分が相続人であることがわかってから3か月以内であれば、相続放棄できるんです。とはいえ、これも事情によりけりで、死後1年たってから借金が1,000万円あったことがわかった、というような場合、確固たる理由があれば放棄できる場合があるんです。漠然とした不安があるから放棄したい、ではダメなんですが……」

財産といっても、借金や、山奥のぽつんと一軒家だった場合、ほんと困る。そういった場合は、放棄するしかないのではないだろうか。

相続の期限

①相続税の申告・納付:被相続人死亡を知った日の翌日から10か月以内

②遺産分割協議:被相続人死亡時より10年以内

③相続登記:相続開始と不動産取得を知った日から3年以内
* 24年4月1日より義務化。

** 個人的な都合では期限延長はされません。

横森 理香
一般社団法人日本大人女子協会 代表
作家/エッセイスト