親が亡くなると、実家には大量の遺品がのこされます。思い出が詰まったものばかりでなかなか処分できないという人も多いですが、『親を見送る喪のしごと』の著者で作家・エッセイストの横森理香氏の実際の体験をもとに、遺品整理のポイントについてみていきましょう。
母はなんにもしなかったのに、宝石だけ持って行った…愛する親の形見、もらう?捨てる?「遺品整理」で後悔しないために【体験談】
ノスタルジーと現実は違う…母がのこした「大量の衣服」のゆくえ
母はおしゃれだったから、おびただしい量の洋服、靴、バッグを残した。それも、秋田にいる間にあらかた仕分けなければならなかった。「カシミヤのコートは、私が美和(私の姉)のために管理することになってるから」と従姉の千津子姉さんが言うので、着物と一緒に送った。
「美和にとっては一生ものだから」と言うが、洋服に興味がない姉が、カシミヤのコートを着るとは思えなかった。まあ、千津子姉さんは母と半分一緒に育った、いわば姉妹みたいなものだから、着てくれるなら供養になる。
宝飾品や着物、高価な衣類などは死後、親戚縁者で取り合いになるという話をよく聞く。
おばあちゃんと一番仲が良く、老後の面倒を見ていた友人が言っていた。「母はなんにもしなかったのに、宝石だけ持って行った」と。その代わり、彼女は遺言で大きな土地を相続した。土地の半分は相続税で持っていかれたものの、残り半分に豪邸を建てて住んでいる。
これも親族から喧々囂々(けんけんごうごう)と非難されたらしいが、それぐらいのお世話はしていたのだ。「施設に預けてからも、毎日面会に行ってました」と語る彼女は、遺産が目的だったわけではなく、本心からお世話していた。ホントはこういう人が、遺品も身に着けるべきだと思う。
姉には母が最後に上京した際に着ていた、軽くてあたたかそうなハーフコートをあげた。まだ新しいし、カジュアルだから姉にも着られるだろう。私は母が半纏代わりによく羽織っていた、ハレルヤのカーディガンをもらった。着やすいようにわざわざ裏をつけさせたカシミヤの10万円カーディガンだ。
私も杉並の家にいた頃よく貸してもらっていたから、思い出としてとっておきたかったのだが、結局、猫の毛がつくし爪がひっかかるので、姉にあげてしまった。ノスタルジーと現実は、残念ながら違うのだ。