妻の妊娠を機に、マイホームの購入を検討しはじめた30代のA夫妻。郊外のベッドタウンで、新築の戸建てを購入しました。条件に見合った家が見つかり大満足の2人でしたが、1年後……なんと自宅を売却し、賃貸マンションへ引っ越せないか検討しているそうです。A夫妻にいったいなにがあったのか、ファイナンシャルプランナーの松田梓氏が、A夫妻の事例から「持ち家を検討する際の注意点」を解説します。
“新築・戸建てのマイホーム”に大満足のはずが、わずか1年で売却を検討…世帯年収1,000万円、30代共働き夫婦の「大誤算」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

A夫妻にあった「2つ」の不安材料

たとえば、投資信託や株式の場合は、流動性が高く売買手数料も安価なため、「今日買って、明日売る」ということもできますが、住宅はそうはいきません。

 

住宅はすぐに売り手が見つかるものでもありませんし、購入するときだけでなく売却時にも大きな手数料がかかります。一般的に、不動産売買時にかかる費用は売却価格の5~10%前後といわれており、数百万円にのぼります。購入から1年など短い期間で、「こんなはずではなかった」と売却を繰り返すのは非現実的です。

 

そのため、住宅を購入する際には、長く快適に住み続けられる場所や条件をしっかりと考え、慎重に検討することが重要です。

 

A夫妻の場合は、マイホーム購入時に以下のような「不安材料」がありました。

 

1.「予想」で間取りを決めた

2.予算を優先し、いきなり知らないエリアに住宅を購入した

 

1.「予想」で間取りを決めた

A夫妻は第2子を検討していることから、子ども部屋が2つある物件に決めました。ただ、必ず第2子を授かる保証はありませんし、逆に今後第3子に恵まれるかもしれません。介護などの関係で、親御さんと同居する可能性もあります。

 

家族全員が快適に暮らすためにも、部屋数がはっきりとしてから購入を検討するとよいでしょう。

 

2.予算を優先し、いきなり知らないエリアに住宅を購入した 

近くに小中学校などの教育施設や便利な商業施設があるか、病院があるかといった周辺環境や災害の発生リスクなどはある程度事前に確認可能ですが、実際の住みやすさや通勤のしやすさ、ご近所トラブルがないかなどについては住んでみないとわからないものです。

 

そこで、もし土地勘がなく、住んだことのないエリアに家を買う場合、住宅購入前に1度賃貸物件を借り、そのエリアにおためしで住んでみることもおすすめです。

 

住みやすさや問題点を体感したあと、「ここなら大丈夫そうだ」と判断したあとに購入を決断すれば、失敗を最小限に抑えることができます。

 

「購入するならマンションか戸建てか」と迷っている人にも、この方法はおすすめです。頭でイメージするだけでなく、実際に住んでみることで、住居に対する自分なりの価値観が見えてきます。購入する際の迷いも少なくなるでしょう。

 

これらのポイントを総合的に鑑みると、A夫妻はしばらく賃貸物件でもよかったのかもしれません。

 

「賃貸vs.持ち家」、「マンションvs.戸建て」、「新築vs.中古」の3点は、物件選びの際の大きなポイントになります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、家を買ってから後悔しないように、それぞれの特徴を事前にチェックしておきましょう。