世界各国で加速度的に進められている、AI開発やロボット開発。AI活用社会に向けて早急に考えなければいけないのが、IT・グローバル社会に適応できる子供たちの教育です。現在、「STEM教育」は世界各国で盛んにおこなわれていますが、日本は一足出遅れたと言わざるを得ません。そこで本記事では、日本におけるSTEM教育の現状の問題点と今後について解説します。
日本の未来を切り拓け!AI活用社会を生き抜く子供たちのための「STEM教育」 (※写真はイメージです/PIXTA)

海外では国家戦略として「STEAM教育」を推進

(※写真はイメージです/PIXTA)
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バラク・オバマ氏の提唱で世界トップレベルのSTEM教育が進められているのがアメリカです。

 

STEM教育の発祥国であるアメリカは、「2020年までに初等中等教育でSTEM教育を指導できる教員を10万人育成すること」や「高等学校卒業までにSTEM教育の経験者を50%増加させること」などの目標を掲げてきました。アメリカではSTEM教育を単なる教育のひとつという扱いではなく、国家戦略のひとつとして支援しています。

 

アメリカには大学卒業後に学生ビザで1年間の企業研修が受けられるOPT(Optional Practical Training)という制度があります。OPT期間は最大1年が基本ですが、大学や大学院でSTEM教育またはそれに準ずる科目を履修していると、最大3年まで延長できます。

 

また国が設立した「High Tech High」は、STEM教育に特化した学校です。授業料が無料で、教科書や成績表もない自由で革新的なスタイルを確立しています。

 

「A」を加えた「STEAM教育」に、さらに「ロボット工学(Robot)」の「R」を加えた「STREAM教育」もアメリカが力を入れている教育のひとつです。ロボットの設計から運用までこなせる能力開発を目指しています。

 

シンガポールでは2019年時点で防衛費がおよそ19%に対し、教育費が約16%と、自国の防衛費とほぼ同等額の予算を教育費に充てています。

 

STEM教育の推進と国力を上げるために設立された「シンガポールサイエンスセンター(国立博物館)」は世界的にも有名です。シンガポールサイエンスセンターでは、科学に関する1,000近くの体験型アクティビティに参加することができます。

 

5階建てビルの高さを持つシアターで、まるで生きているかのようなマンモスを観られるなど、子供が科学を楽しく学べる施設となっています。

 

シンガポールは日本と同じように小・中・高校と学校教育がありますが、義務教育は小学校までです。中学校へ進学するには国が定めた卒業試験を受けなければなりません。日本と異なり、小学校卒業時点で自分の学力と向き合わざるを得ない状況にあるのです。

 

子供たちの学力が世界トップレベル※1なのは、こうした学校制度が背景にあるのかもしれません。

 

中国でも政府主導でSTEM教育に力を入れています。2017年には義務教育課程でSTEM教育を必修化し、翌2018年にはこの先10年のSTEM教育計画がまとめられました。

 

2023年11月にフランス・パリで開催された「国連科学文化機関(ユネスコ)」の総会で、中国・上海市に「ユネスコ国際STEM教育(科学・技術・工学・数学)研究所」が設立されることが決定しています。