リアル空間とほぼ同じ世界をデジタル上に構築し、そこでシステム運用のすべてをリアルに稼働させることを指す「デジタルツイン」。ドイツの自動車メーカーBMWとメルセデスが生産工場に、Amazonもスマート物流工場にこれを本格導入したことで話題になっています。「デジタルツイン」には、ライン変更やロボットのトレーニング、人員の効率的な配置の実現など利点は多く、「DX」の本質の1つともいわれています。「デジタルツイン」の現状と、導入によるメリット、そして未来について解説します。
現実世界の環境をデジタル世界で再現「デジタルツイン」BMWやメルセデスも積極導入する、最新テックのメリットと将来性 (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

BMWの「デジタルツイン工場」に驚愕

ドイツの自動車メーカーBMWとメルセデスは生産工場に「デジタルツイン」を本格導入しています。このことが最初に発表されたのは、ディープラーニングとGPU(=画像処理装置)の世界最大規模のオンラインイベント「GTC2021」の基調講演でのことでした。


米国の半導体メーカー・NVIDIA社の創業者のひとりであり、CEOのジェンスンフアン氏は「BMWは年間200万台以上、1分に1台の割合で自動車を生産し、同じものはひとつもない。工場では57,000人の従業員が働き、自動車のモデルやカスタマイズ、新車種の導入などで、ラインの配置などを頻繁に変更している。その最先端の工場にはデジタルツインを導入している。私達はBMWとともに未来の工場を作っている」と語りました。


そして、同社の「NVIDIAOmniverse」(オムニバース)というプラットフォームで開発されたBMWのデジタルツイン工場の映像を観て、視聴者は驚きました。その映像にはBMWの工場や製造ラインがリアルに再現され、人とロボットが働く様子が忠実に再現されていたからです。

 

まるで実写真を見ているかの再現性だ(提供:NVIDIA)
[図表1]デジタルツインで作られたBMWの工場まるで実写真を見ているかの再現性だ(提供:NVIDIA)

 

(提供:NVIDIA)
[図表2]製造ラインの変更や人員の配置はデジタルツイン内でシミュレーションがおこなわれ、最適な運用をリアル世界にフィードバックする (提供:NVIDIA)

 

「デジタルツイン」とは現実世界から収集したデータを元に、そっくりなデジタル仮想世界を構築する技術です。デジタル仮想世界では現実と同様のシミュレーションやAI予測、機械や設備の配置変更、人員の配置、搬送ロボットの走行などを再現し、最適な環境を現実世界にフィードバックします。

 

(提供:NVIDIA)
[図表3]黄色い自動搬送ロボットが荷物を運ぶ様子。このロボットのトレーニングや搬送ルートの設定、変更もデジタルツイン内で試した上で実践に反映する (提供:NVIDIA)

 

(提供:NVIDIA)
[図表4]膨大なロボットのトレーニングやシミュレーションはデジタルツイン環境の中で試行された上で、実践に導入される。 (提供:NVIDIA)