世界各国と比較して遅れを取っている日本のSTEM教育の現状
日本におけるSTEM教育はまだ黎明期といってもいいでしょう。2019年に中央教育審議会諮問においてSTEM教育が提唱され、2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されました。
中学校では2021年より技術家庭の授業におけるプログラミング授業の内容拡充、2022年からは高校の授業科目に「情報Ⅰ」が新設されています。
しかし先述したように、アメリカをはじめとした世界各国では10年ほど前からSTEM教育に力を入れています。日本は世界水準の教育と比較するとかなり遅れを取っているといえます。
文科省では生徒1人1台のデジタル機器支給を目的としたGIGAスクール構想を提唱しましたが、まだ普及し始めたばかりです。
日本ではSTEM教育ができる指導者も少ないことから、国立埼玉大学でSTEM教育者を育成するための「STEM教育開発センター」を設置。また理数系に力を入れる高校が援助金を受け取れる「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」といった制度も推進して底上げを図っています。
しかし、そもそも日本の学校の授業形態はSTEM教育の概念と正反対といえるのではないでしょうか。STEM教育の基本は「さまざまな学問を横断的に学ぶ」「実践力の重視」「アクティブラーニング(能動的学習)」の3つが基本形です。
現在の日本の学校では教科ごとに区切って学び、教室で一斉に同じことを学ぶ受動的な授業が主流。実践的というよりも知識を詰め込む授業が多いといえます。STEM教育の「個」を基本とした教育方法とは程遠いイメージです。
日本の子供たちは海外の子供と比較して、理系学習に苦手意識を持つ割合が多いそうです※2。それは「好奇心」から学んでいるのではなく、「テストで点を取るため」の知識重視の学習だからかもしれません。
中国ではMake blockというメーカーが、金属パーツを組み合わせてロボットを制作できるツールを子供向けに開発しています。制作しながら自然とプログラミングについて学べるので、子供たちも楽しみながらテクノロジーを履修できます。
またGEMS(Great Explorations in Math and Science)という科学・数学の参加体験型プログラムは世界的に実践されています。日本にもGEMSセンターは開設されており、巨大なシャボン玉を作ったり、宇宙からきた不思議な物質を調べたり、体験型の学びのワークショップが開かれています。
STEM教育でなにより大切なのは、学びに対しての「好奇心」を育てることだといえるでしょう。そのためには日本の学校の「画一的に学ぶ」スタイルから、「個々を重視した学び」への転換が求められているのかもしれません。
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吉田 康介
フリーライター