(※写真はイメージです/PIXTA)

医療現場には、専門科目に応じたさまざまな検査機器が必要です。しかし、診療に必須の検査機器も、自分でクリニックを開業するとなれば、予算や物理的スペースなどのさまざまな制限のなか、選択や導入に頭を痛めることになります。採算性や電力など、ぜひとも着目すべきポイントを見ていきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

クリニック開業時、医療機器の選定は極めて重要

勤務医の先生の場合、さまざまな医療機器が「あって当たり前」「使えて当たり前」の環境にあることから、それらの導入プロセスについてはあまり意識に上らないかもしれません。

 

ご自身のクリニックを開業するにあたり、最新機器をズラリと取りそろえられればベストですが、現実的ではありません。導入費用・維持費・検査をする人数とその収益などについて、医師と経営者の双方の目線から厳しく検討・判断する必要があります。さらに、導入した医療機器は、日々の保安点検はもちろん、万が一故障した際の対応も、医師自らが行わなければいけないことを忘れてはなりません。

 

このような話を聞くと、機器の選定にじっくり時間をかけたくなると思いますが、クリニックの開院が決まった以上、なるべく早くに決断する必要があります。なぜなら、機器類の配置はクリニックの間取りや内装に大きく影響するからです。

本当に必要となる医療機器の選定ポイントについて、忘れがちな電力の問題ともあわせ、見ていきましょう。

選定ポイント①どこまでを自院で診察し、どこから総合病院へ紹介するか

まず考えるべきは、その医療機器がクリニックのビジョンに合致するものなのか、強みとなる専門分野で必須のものなのか、という点です。

 

判断の目安として「どこまでを自院で診察し、どこから総合病院へ紹介するか」があると思います。これらを具体的に考えると、要・不要の判別がつきやすいでしょう。

 

また、その医療機器を導入して診療を行うことが「患者様に選ばれるきっかけとなる」「自院に高い付加価値をもたらす」と判断できる場合は、次のステップに進んでみましょう。

選定ポイント➁採算性と経営効率を考える

次に考えるべきは採算性・経営効率です。

 

高性能であっても、導入価格や維持・保安管理の費用が高く、採算が取れない場合は、導入を慎重に検討しなければなりません。

 

また、利用する頻度が低い機器も生産性が高いとはいえないでしょう。

 

「1ヵ月で〇回利用したら、月〇〇円の収益となり、〇年で採算が取れる」など、売上や運用の具体的な数値を入れて検討してみてください。

 

勤務医から開業医(院長)となり、医療機器の導入を検討する際には、「クリニックの受診患者は病院と比べて重症度が低く、病院より求められる検査や処置の程度が低くなる」「検査希望や適応となる人数が減る」という2点を念頭に置く必要があります。

 

いいかえるなら、「病院とクリニックでは求められる役割が変わる」「自院でやること、やれることを絞る」ということです。

 

診療方針や地域のニーズに沿った「必要な医療機器」のみをうまく選び取ることが必須です。

一般的な内科の設備投資のイメージ

一般的な医療機器への投資額は、立地、診療科目、診療時間、診療方針等によって差異が生じますが、おおむね1,500万~2,000万円程度となります。

 

内科を開業する場合、必要となる電子カルテや主な医療機器の概算は以下の通りです。

 

電子カルテシステム:200万~300万円(近年では初期投資0のものもあり)

●一般レントゲン装置:200万~250万円

●CR/PACS装置:200万~250万円(PACSモニタ2台構成)

●超音波画像診断装置:300万~400万円(腹部、頸動脈プローブ)

●心電計:100万~150万円

●内視鏡システム:600~700万円(内視鏡洗浄機150~200万円)

 

このように、内視鏡システムを除いても約1,500万~2,000万円の設備投資が必要となります。

 

とくに必須となるCRやレントゲン装置ですが、レントゲン装置は準備や設置、保健所の許可などに費用が発生するほか、書類作成にも時間がかかります。また、レントゲン室の設置も必要となるため、内装の設計段階で導入の有無が決まっていなければいけません。真っ先に導入を検討するようにしましょう。

 

内視鏡を導入する場合にも、前処置室、リカバリールームの設置や、内視鏡洗浄機や、高額な洗浄液等の管理スペースも必要となるため、こちらも内装設計の段階で決めておく必要があります。

 

小児科を開業する場合、患者さんの多くは内科よりも軽症で、さらに感染症のケースが多いと想定されます。

 

そのため、高度な診断機器を必要とするケースは内科よりはるかに少ないといえます。内科では必須とされるレントゲン装置も、設置しないケースは少なくありません。

 

逆に、小児科なら導入を検討したいのがオンライン上の診療予約システムです。小さな子どもは長時間待合室で待つのが難しいことあり、待ち時間の短縮につながる診療予約システムは、小さな子どもを持つ親御さんから重宝される傾向にあります。

 

また、医療機器の費用が抑えられるぶん、親御さんが安心して来院でき、子どもの患者さんが快適に治療を受けられるよう、内装へのこだわりを強くしたほうがよいでしょう。

物件選びで忘れられがちな電気容量…一般の建物は容量オーバー!?

開業物件を選定する際には、立地条件や周辺環境、賃料などを優先する傾向があります。しかし、医療機器を多数導入する際に重要となる「電気容量」は盲点になりがちです。

 

電圧には、低圧電力(容量の限界あり、49.9KVA以下)と高圧電力があります。一般的な医療機器であれば低圧電力では問題はありませんが、CT装置を設置する場合などは、最低でも50KVAの電気容量を必要とするため、一般の建物では電気容量をオーバーしてしまいます。

 

クリニック内で電力を要するものとしては、電灯の電力(単相電力、1m2あたり0.15KVA)、空調機器(三相電力で1m2あたり0.15KVA)、一般撮影のレントゲン(10.0KVA)などが想定されます。

 

100m2の内科クリニックの場合、

 

電灯:0.15×100=15KVA

空調機器:0.15×100=15KVA

レントゲン:10KVA

 

と、40KVAが必要となります。

 

これに加えてパソコン、周辺機器、その他の医療機器を入れると50KVAを超える可能性はじゅうぶんにあります。

 

100m2でこれほど電力が必要になるわけですから、電灯や空調がさらに必要となる広い面積のテナントを借りる場合には、とくに注意が必要です。

 

医療機器を用いる現代の医療は、安定した電力供給があってはじめて、安定した医療が実現できます。この大前提を忘れず、物件選び、医療機器選びをするようにしましょう。

 

 

武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師

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