60歳で定年退職したAさんの生活
60歳で定年退職したAさんの生活Aさん(65歳)は、5年前に定年退職で会社を辞めましたが、退職金や預貯金を合わせて4,000万円ほどあったため、仕事もせずにのんびりとした生活を送ってきました。
Aさんは離婚歴があり、お子さんも1人いたのですが、すでに家庭をもっており現在はほとんど交流がない状態で、東京都下の1LDKの賃貸マンション(家賃:約7万円)に一人暮らしです。
2年前からは年金生活に入り(報酬比例部分のみ受給)ましたが、今年からは基礎年金も併せて受給できるようになり、年金月額は合わせて約17万円です。
贅沢もしない性格なので年金内で支出を収める自信があったのですが、昨今の値上がりもあり、将来の生活に対しての不安も大きくなってきました。
「定年退職した5年前とは生活が一変してしまいました。5年前はコロナなんてなかったし、物価がこんなに上がるなんて思ってもみませんでした。病気に対する不安や住まいやお金に対する心配が急に大きくなってきました」
家賃の値上げと更新に注意
食料品に限らずさまざまなものが値上がりしている現在、当然家賃の値上がりも考えられます。年金生活に入ってからの家賃の値上がりは厳しいですね。
また、高齢を理由に契約解除されることは借地借家法の観点からはないのですが、認知症を発症するとオーナー側にとっては家賃滞納やトラブルの原因になるため、法律上、意思能力がないと判断された場合は契約更新が難しくなります。親族などが借主となったり成年後見人を立てたりする方法での締結を求められる可能性があります。こうした点にも注意が必要です。
賃貸に住み続けるのもいいですが、早めに「老人ホーム」への入居を検討してもいいでしょう。
元気なうちに老人ホームの入居を検討する
老人ホームはさまざまな種類があり、要支援や要介護の状態でなくても入居できるホームがあります。Aさんのようにまだ介護が必要ない、自立した人が入居することができる老人ホームは「自立型老人ホーム」と呼ばれています。
賃貸の方以外にも、ご自宅がバリアフリーになっていない方は、大きなお金を工事にかけるよりも早めに老人ホームに入居したほうがいいケースもあります。
老人ホームは「公的施設」と「民間施設」がありますが、自立型老人ホームで入居しやすいのは「民間施設」です。
民間の老人ホームだと「お金がかかりそう……」というイメージがありますが、立地により金額は大きく変わってきます。当然都心に近くなるほど入居にかかる一時金なども高くなりますので、予算を考えて「全国対応型」のホームなど広い範囲で選んでいきましょう。
特に一人暮らしの男性だと食事の栄養バランスなどが不安なケースも多いですが、老人ホームであればバランスの取れた食事も提供してくれますし、認知症や寝たきりといった介護状態になっても引き続き入居することができます。
ただし、今後は高齢者も増えてきますので、空き部屋を探すのは難しくなってくるかもしれません。早めにネット等で自分に適した老人ホームを探して相談しておくことをおすすめします。
たとえば、Aさんの場合、定年退職時に4,000万円所有していましたが、年金受給までのあいだに約800万円を使ってしまっています。残りの3,000万円ちょっとと年金額以内に収まるような老人ホームを探さないといけません。
Aさんは現在、都心で暮らしていますが、関東地方のある県が生まれ故郷ということで、この地域でホームを探すことにしました。都心からはできるだけ離れたほうが入居費用は安くなります。
月額利用料は年金月額以内に収まるのが理想ですが、今後はインフレや人手不足でアップしてしまう怖れもありますので、余裕を持った資金計画が必要です。Aさんの生まれ故郷だと入居一時金は100万円台、月額利用料は20万円前後という所が多いようで、年金月額以内には収まりませんでしたが、入居一時金が都心のホームに比べかなり安くなったので、資金的には問題がなさそうです。
Aさんは「もう少し時間をかけて、実際に見学もしていろいろ探してみようと思います」といっています。今後の一人暮らしの不安がなくなったせいか、顔色も少し明るくなったようでした(※ご本人の了解を得て一部脚色して記載しております)。