日本企業の多くは定年を60歳に設定していますが、公的年金の受給開始年齢は原則として「65歳」なので、再雇用で働く人が多くなっています。ただし、給与が定年前より減額されるケースがあります。実は、足りない分をある程度補う公的な給付金もあります。ただし、受給するには申請が必要です。その制度「高年齢雇用継続基本給付金」について解説します。
60代サラリーマン「定年後再雇用」で給与が“40%ダウン”のケースも…“もらい忘れ”は損!減額分を一部補てんしてくれる「公的な給付金」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

◆「支給率」の早見表

【図表2】は、減額後の給料の何%を受給できるか(支給率)を「低下率」ごとにまとめた「支給率」の早見表です。

 

厚生労働省HP参照
【図表2】支給率早見表 厚生労働省HP参照

 

◆「最低限度額」と「支給限度額」

ただし、支給額には「最低限度額」と「支給限度額」があります。

 

上記の計算結果が「最低限度額」を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。また、賃金の額が「支給限度額」以上である場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。

 

「最低限度額」と「支給限度額」は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。2023年6月現在、最低限度額は2,196円、支給限度額は37万452円です。

「高年齢雇用継続基本給付金」の受給手続き

高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、原則として2ヵ月に1回、事業主を介して、事業所を管轄するハローワークへの申請が必要です。

 

初回分の受給手続きは以下の通りです。2回目以降は、受給資格確認の手続きは不要です。

 

【初回分の受給手続き】

1. (本人→事業主)受給資格確認票・支給申請書の記入・提出

2. (事業主→ハローワーク)受給資格確認票・支給申請書・賃金証明書の提出

3. (ハローワーク→事業主)受給資格確認通知書・支給決定通知書・2回目分支給申請書交付

4. (事業主→本人)受給資格確認通知書・支給決定通知書・2回目分支給申請書交付

5. (ハローワーク→本人)給付金の支給(口座振込)

 

60歳以降、働きながら老齢厚生年金を受給する場合の注意点

最後に、60歳から年金を受給する以下の2つのケースにおける注意点をお伝えします。

 

・繰り上げ受給

・特別受給の老齢厚生年金

 

これらの場合は、以下の通り、給料の「低下率」に応じて、老齢厚生年金の受給額が減額されます。

 

・給料の低下率61%以下:老齢厚生年金が6%減額

・給料の低下率61%超~75%未満:老齢厚生年金が5.48%~0.35%減額

 

この場合の「低下率」は、「標準報酬月額」を使って以下の式で算出される額です。

 

「減額後の給料の標準報酬月額」÷「60歳時の給料の月額」×100(%)

 

働きながら老齢厚生年金を受け取るのであれば、収入減はそれでカバーできるだろう、ということで、受給調整が行われるのです。

 

特別支給の老齢厚生年金はともかく、「繰り下げ受給」を選ぶと、65歳から年金受給開始するよりも年金の額が下がるのに加え、さらに年金が減額されることになります。したがって、定年以降も働くのであれば、可能な限り繰り上げ受給は避け、年金の受給開始は65歳にして、給料の減額分を高年齢雇用継続基本給付金等でカバーするほうがいいかもしれません。