ある日突然、離れて暮らす両親が認知症になった。そのような将来は決して他人事ではありません。施設への入居が必要になった場合、毎月どれくらいの費用がかかるのでしょうか。また、その費用は年金と貯金で賄える金額なのでしょうか。遠方に住む母親に突然介護が必要になってしまった夕子さん(仮名)の例をもとに見ていきましょう。
「噓でしょ…たった6年で全財産が底を尽きるなんて」施設入居待ち・88歳母の年金と貯金額を知った65歳娘が「毎月9万円の赤字」と絶句した<自営業の厳しすぎる現実> (※写真はイメージです/PIXTA)

自営業で働いてきたトヨさんの年金は、たったの月7万円

トヨさんの年金は、月額約7万円です。トヨさんは旦那さんと二人で小さな個人商店を経営していました。結婚当初から夫婦二人三脚で、365日ほとんど休まず、朝から晩まで必死にお店を切り盛りしてきたのです。しかし、それほど働き続けてきても、トヨさんがもらえる年金はわずか7万円しかありません。

 

会社員であれば、毎月の給料から天引きされるかたちで「厚生年金」が上乗せされますが、昭和の時代から日本の農業や自営業を支えてきた人たちが加入するのは、原則として一律の「国民年金(老齢基礎年金)」だけです。

 

どれだけ働いても、サラリーマンのように現役時代の収入に応じた手厚い上乗せは一切ありません。さらに、夫が亡くなったとしても、自営業の妻に引き継がれる遺族年金は、子どもが成人していれば原則としてゼロなのです。

 

民間施設に入居すると、わずか6年で貯金が底をつく計算に

結局、担当のケアマネジャーに相談し、トヨさんは月8.2万円の特別養護老人ホームに入ることになりました。幸いなことに、ちょうどユニット個室に空きが出て、翌月から入居できることになったのです。

 

国の補助(負担限度額認定)が適用される特別養護老人ホームであれば、毎月の赤字は1.2万円。これなら、トヨさんの貯金700万円を取り崩しても十分に余裕があります。

 

今回はたまたま特別養護老人ホームにすんなりと入居することができましたが、すぐに空きが出ずに待機が発生することも珍しくありません。待機中に月16万円の民間施設にトヨさんを預けるとなると、毎月の赤字は9万円に跳ね上がります。年間の赤字額は108万円。トヨさん夫婦が必死に貯めてきた700万円の貯金が、特養の順番を待つだけの期間に、わずか6年と数か月で消えてなくなる計算です。

 

もし貯金が尽きるまでに特別養護老人ホームに入れなかったら、リタイア直前の夕子さん夫婦が、自分たちの生活費を切り詰めて毎月13万円もの大金を捻出し続けなければなりませんでした。それは、夕子さん夫婦の「老後破産」を意味しています。

 

「特養に入れないだけで、お父さんとお母さんが一生をかけてためたお金がこんなに一瞬で吸い取られていくなんて…」

 

自分の身に起きていたかもしれない未来を想像して、夕子さんはぞっとします。そして、70歳になったら年金を受給しようと考えていましたが、働けるうちはもう少し頑張ろうと決意を新たにしたのです。