後を絶たない「ストーカー」による悲しい事件
今年起こった痛ましい殺人事件が複数ありました。ひとつは6月末のこと、横浜市鶴見区のマンションで「起きたら部屋に元カレがいた」と言って部屋を出たところで女性が殺されてしまった事件。もうひとつは2月、福岡市博多区、JR「博多」駅付近の繁華街で女性が元交際相手に刺殺されてしまった事件です。いずれも、いわゆる「ストーカー」が疑われる殺人事件でした。
ストーカー被害の事案は「当事者間でなんとかなるのではないか?」と思うものもあれば、話を聞いていくと「これは危ない、早急になんとかしなければ!」と明らかに常軌を逸した被害内容のものもあります。そう言う時には、一緒に警察相談に行くなど、できる限りのことをするようにしています。
そこには、警察に相談しても解決できるわけではない、という背景があります。
いざ、警察に動いてもらいたい場合に必要なこと
ストーカー規制法は、被害の申告があったに時、
①まずは警察から「警告」をして、
②次にそれに違反した時は、刑事責任が問われる旨の「禁止命令」を出す、
という2段階構造の規制をしています。
「警告」をしてもらうだけであれば、適切な被害の申告によって警察に動いてもらえる場合もありますが、「禁止命令」となると、警察も加害者の方を取り締まる前提で、最終的にはその人を罪に問えるだけの証拠を必要とすることがあります。
警察は、市民の生活を守ってくれるところですし、警察官は、日々、被害の申告に対して一つひとつ熱心に聞いて対応してくれています。
しかし、いざ実際に警察に動いてもらおうとしても、「その時から少し時間が経っていた」、「来たLINEを消してしまった」という状況だと、証明できずに「男女のもつれかな」のようにあしらわれてしまうこともあるのです。
そのため、相談があった場合に筆者も弁護士として証拠集めをアドバイスし、一緒に警察に同行しています。
ストーカーによる痛ましい事件を防ぐために
一方で、「民事不介入」という建前もあります。
犯罪に該当する行為でないと、相談には応じてくれても、警告、禁止命令、逮捕……、と警察は思うように動いてくれない場合があるのです。
また、ストーカー規制法の対象行為にあたらなくても、「住居侵入」や「器物損壊」といった、他の罪名でなされた行為であって、それ自体重大犯罪に聞こえないような事件が、実は「恋愛感情やそのもつれからくる恨みだった」ということはよくあることです。警察や司法の介入が遅れ、昨今のような痛ましい事件が起こることも、そこに一因があるかもしれません。
困ったことがあったら、どのような資料を集めて、どのように相談したらいいか、警察に行く前に、一度、弁護士に相談してみるのも一案だといえるでしょう。