08年のリーマンショック後、ともに暴落した日米の株式市場。積極的な金融緩和を行ったアメリカは10年時点でリーマンショック前の水準にまで株価を戻したのに対し、弱気な日本がトレンド転換させるまでには長い時間がかかりました。本稿では、阿部智沙子氏の著書『最強の株の買い方「バーゲンハンティング」入門』から一部を抜粋し、日本株式市場のリーマンショックからの復活と再びの底割れ、その後「解散総選挙」を経ての完全復活までの道筋をたどりながら、“絶望”のマーケットにみられた「買い」検討可能なサインについてみていきます。
リーマンショックから3年越しの復活も、すぐに底割れした日本株…“夜明け前”の相場に現れていた「買い」のサイン

「解散」「総選挙」で夜が明ける以前に現れていたささやかな吉兆

「夜明け前が一番暗い」という相場の格言がありますが、後になって振り返れば、TOPIXの最安値がまさにその夜明け前だったようです。

 

その後、日経平均株価もTOPIXも不安定ながら安値を更新することはなく、底這いのような動きになります。この底這い状態の結末がはっきりと見えたのは5ヶ月後。

 

11月14日、当時の民主党代表・野田佳彦内閣総理大臣が安倍晋三自民党総裁との党首討論で、衆議院議員削減法案に賛同してもらえるならば16日に衆議院を解散する考えがある、と表明する大サプライズ。

 

これが伝わった翌15日から日経平均株価は連続ギャップアップで上昇し、総選挙前日まで上値を切り上げ続けます。


12月16日に行われた総選挙は自民党が圧勝。「選挙が終われば上昇も一服だろう」との見方も出ていましたが、選挙結果が出た後も、押しをはさみながらの上昇基調が続き、大納会高値で12年を終えています(図6)。

 

株式市場がどれほど「解散」「総選挙」を待ちわびていたか。11月15日以降のギャップアップに次ぐギャップアップは、それが現実になった歓喜そのもののようではありませんか。
 

(日経平均株価:日足2012年9月3日~12月28日)
図6.「解散」「総選挙」で長い長い夜がついに明ける (日経平均株価:日足2012年9月3日~12月28日)

 

そして13年はご承知の通り、安倍新政権のもと勢いのある上昇相場で始まっています。

 

苦渋に満ちた4年間、株式市場の暗黒時代はこうして幕を下ろしました。その一番の立役者は、やはり、大惨敗を覚悟のうえで解散を決断した野田総理大臣でしょう。


もっとも、暗黒時代とはいっても、株を持っていない人にとってはこの時期こそが願ってもない好機でした。「一番暗い夜明け前」の6月4日から底這いの動きをしていた場面が、大底圏で買う最後の機会となっています。

 

実際にそこで買いに出ることができたのか、と言えば、冷静に市場を見ていた人ならば十分なし得たと思います。

 

というのは、日経平均株価やTOPIXが脆弱きわまりない動きをしていた時期、そして12年6月に日経平均株価は年初からの上げ幅を全戻し、TOPIXは“リーマン”時の最安値を割り込むという極めてネガティブな展開となっていたときに、株式市場の中には前向きな兆しが現れていたからです。

 

そのひとつが、またしても東証2部指数です(図7)。09年3月以降、この指数も日経平均株価やTOPIXと同じように、上げては戻す動きを繰り返していましたが、東日本大震災時の大下げを除けば、下値は切り下がっていません。

 

(東証2部指数:月足2008年1月~13年12月)
図7.東証2部指数はすでに明るい兆しが現れていた (東証2部指数:月足2008年1月~13年12月)

 

その一方で、上値はわずかずつながらも切り上がっています。さらに、12年4月からのショック甚大な下落局面では、その前の安値、11年11月の2046ポイントよりも高い位置で下げ止まっています。この時点で、上値・下値が切り上がるという、上昇トレンドへの転換を示唆する形になっています。

 

6月4日に全戻しとなった日経平均株価は、場合によってはさらに下げたかもしれません。TOPIXは、結果としては09年3月安値と12年6月安値がかなり期間をおいてのダブルボトム型になっていますが、これも場合によっては底割れして最安値を更新していたかもしれません。

 

しかし、そのとき決して市場全体が総崩れになっているわけではない。市場の中心ではない、中小型株・新興株に明るい兆候が現れている状況ならば、仮に日経平均株価やTOPIXが底割れして下げたとしても、もはや下値は限定的と見込むことができます。買いに出ることを大いに検討していい場面です。

 

なお、非常に残念なことに、市場の実態を知る貴重な手掛かりを与えてくれていた東証2部指数は、新市場区分移行によってこの世から姿を消してしまいました。また、後に出てくる日経ジャスダック平均も、東証2部指数に勝るとも劣らない、市場実態に近い値動きをする実感の強かった指数ですが、ジャスダック市場の廃止にともない算出終了となっています。

 

指数を算出していた東京証券取引所や日本経済新聞社としては、対象市場が廃止されたのだから株価指数をなくすのは当然と、何ら躊躇することなく算出を終了したと思います。しかし、相場情報としての有用性という観点からすれば、歴史と実績を持つこの2つの株価指数が葬り去られた損失は計り知れません。

 

新市場区分移行後、東証2部市場とジャスダック市場に上場していた銘柄の大半は東証スタンダード市場に上場しています。その東証スタンダード市場指数は22年6月27日からまともに4本値が算出されるようになり(それ以前は16時に引け値だけを公表するという、株価指数としてはちょっと信じ難い算出でした)、これが東証2部指数と日経ジャスダック平均の代替になることを期待していたのですが、どうも違うようです。


まだ新市場ができてから1年も経っていないので断言はできませんが、東証スタンダード市場指数は、東証プライム市場指数に近い値動きになっています。

 

おそらく、日本オラクル(4716)をはじめ、時価総額の大きい旧東証1部上場銘柄が複数、東証スタンダード市場に入ってきたからでしょう。これらの旧東証1部上場銘柄がTOPIX構成銘柄であることも関係していると思われます。