あまり知られていない「日本の森林」の実態
日本の森林の約半分が、人の手が加えられた人工林と呼ばれるものです。植林や種まき、挿し木などを施し、おもに木材を切り出すために育てられている森林です。
人工林はおしなべてスギやヒノキなど針葉樹が多く密生しています。しかしながら、昨今の人工林の多くは手入れが進まず、樹木自体の老齢化が進み、衰退しています。さらに森林が茂りすぎるのを防ぐため間伐した樹木が、未利用のまま放置されている状況が嘆かれています。
こうした事態は、大雨による土砂災害の増加や、生物多様性の棄損、森林のCO2吸収能力の低下などを招きます。
問題を解決する糸口として、地域の森林資源を使いながら植え替えていく循環利用の促進が求められています。
実は「『ニッポンの木』は伐って植え替えながら使うほうが良い」これが、あまり知られていない日本の森林の実態です。
「ニッポンの木」が抱えている根本的な問題
森林資源の豊富な日本において、「森林が活用しきれていない」という指摘は、これまでたびたびされてきました。最も根本的な原因の一つに、生えている木そのものである「立木」の価格が安すぎるということが挙げられます。
たとえば、人工林のなかで最も多いとされるスギの木は、樹齢30年以上の「立木」における平均価格は、1本あたり3,000円以下です。一方で、新たに苗木を植えてスギを育てるには、1本あたり10,000円以上のコストがかかり、明らかに赤字となってしまいます。
この状況では山の所有者である山主が「木を切りたがらない」、「切っても植えたがらない」という悪循環が生まれてしまいます。日本の人工林において木を切った後に再造林(人工林を伐採した跡地に再び苗木を植えて人工林をつくること)が行われる割合は、4割以下にとどまっているのが現状です。
この問題を解決するためには、「ニッポンの木を使う」ことで生み出される製品(モノ)はもちろん、体験(コト)などの付加価値を高めて、利益を生み出し、再造林や挿し木のコストとして還元する、新しい流れが必要になります。