技術の発展とともに、日常生活でもロボットを目にする機会が増えてきました。活躍するロボットたちの外見は2種類に大別できます。「ヒト型をしているもの」と「していないもの」です。今回はヒト型ロボットにスポットを当て、開発の歴史や社会での役割について解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
ロボットをヒト型にする必要性はあるか?次世代ロボット「Optimus」とペッパーくんが教えてくれること (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜヒト型ロボットは開発されつづけるのか?

ヒト型をしたロボットの開発・製品化は、一般的に「難易度が高い」と言われています。

 

たとえば、特定の機能を効率的にこなすロボットの開発を目的とした場合、その機能に最適な形態を研究・デザインし、機能に寄与しないパーツは省くことで、正確性を高めコストは低く抑えることができます。

 

しかし、ヒト型ロボットはヴィジュアルデザインをヒトに近づけなければならないめ、機能は制限されやすく、性能に寄与しないパーツを組み込む必要もあるため、正確性が低くコストが上昇しやすい傾向にあることが理由の一つです。

 

一方で、ヒト型ロボットは現在も開発されつづけています。製品化にたどり着くことが難しいにもかかわらず、開発が後を絶たないのはなぜでしょうか?

テスラが開発したロボット「Optimus」とは?

たとえば、2022年秋にイーロン・マスク率いる「テスラ」が人型ロボット「Optimus」を発売し、話題を呼びました。これは、「人が行なう作業には人型が適している」という視点から「人型のロボットにより人間が行なう作業を代替する」というコンセプトのもと開発されたロボットです。

 

コンセプトどおり「Optimus」は人間でいえば関節に当たるデバイスであるアクチュエーターを28個擁しています。人の手の構造を緻密に再現したハンドパーツの指は、第一関節と第二関節をもち11パターンの手の動きが可能です。

 

段ボールのように側面が平たく重量のあるものを持ち運ぶこともできれば、じょうろのように湾曲した細いグリップをつかみ、植物の背の高さや鉢の横幅に合わせて水やりをすることもできます。

人間より手先が不器用なのが課題だった、かつてのロボット

アメリカを代表する大手証券会社「ゴールドマン・サックス」は、2000年にニューヨーク本社に600名在籍していた株トレーダーの職をAIに置換し、2017年には2名まで人員削減されたとの報道がありました。出典

 

当時、「ロボットやAIは膨大なデータを処理する頭脳労働は得意だが、人間のように『手先を器用に動かす』『物質の形状や硬度に合わせて握力をコントロールする』などは苦手である」という見解が少なくありませんでした。これは「AIに奪われない職業」に「看護師」や「介護士」が頻繁に挙がる理由の一つでもあります。

 

「AIが膨大なデータをもとに算出した業務フローに従い、我々人間はAIから指示を受け肉体労働を行う未来が来るのでは」としばしば懸念されていました。

 

例えば、お菓子の製造ラインにおいては、最後の箱詰めのみ人間が行い、また、ハンバーガーの製造ラインでは、レジや接客、収支や予算などの経理業務はロボットが行い、人間はバンズにハンバーグ(パティ)を挟み、ハンバーガー袋で包んで折りたたむ作業のみを行うなどです。