「日本の森林」と「NFT」の意外な親和性とは
NFTで木を使うことへの付加価値を高める
日本の森林課題の解決のためには、地域に「木を使ってしたいこと」を叶える文化を根付かせると並行し「安い立木価格を補う利益を生み出す」ことが大切です。
日本の木材は海外からの輸入材との価格競争などの影響を受けており、立木価格を大幅に上げることは難しい状況です。この状況を打開するためには、地域の木材を使った製品や体験にweb3技術のNFTを活用して付加価値をつけ、新たな木の需要を生み出し、末端価格を高めるのが有効です。
たとえば、NFTをメディアに木の情報やメッセージの記録、利用・所有の権利やイベントへの参加資格を付与します。すると誕生日プレゼントとして相手の年齢と同じ樹齢の木を贈ったり、木をテーマにした特別なイベントへ参加できたりするなど、木に新たな価値が付加されます。
木をブランディングすることができるのです。NFTを活用した木のブランド化で得た利益を、挿し木や再造林の費用に還元する好循環を生み出すことが可能になります。
森林関連の活動参加を促進するトークンのイメージ
国内の森林とweb3などのITテクノロジーをかけ合わせることで、「人と人」、「人と森」の関係性・関連性をアップデートすることができます。こうしてニッポンの森林をブランド化することで、本来の価値を蘇らせ、地域再生・林業関係者の地位の向上が叶います。
近い将来脱炭素や生物多様性など、SDGsに繋がるサスティナブルなエコシステム(生態系)の構築も実現していけるでしょう。
「ニッポンの木」×ITテクノロジーが目指すゴール
先に述べたように、インターネットの最大の特徴は場所に捉われず越境的に繋がれることです。そしてweb3は、あらゆるモノやコトのデータを繋げて新しい価値を創造する手段でもあります。
これらのテクノロジーは、これまでデジタル化されてこなかった森林や樹木の情報を活用することで、今まで解決できなかった課題を解決に導き、本来の価値を蘇らせるだけでなく、新しい価値を創造する可能性を秘めています。
また、人口減少の問題を抱える地方においては、新しい経済圏の獲得に役立ちます。
今後ますます森林を擁する地域の経済活性化や環境保護の両立が実現されていく見通しです。
さらに、環境保全効果を明確にしていくことが可能になれば、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの生成による新たなビジネスモデル創造のきっかけになる日もそう遠くないでしょう。
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伊藤 淳
TIS株式会社 DXクリエイティブデザイン部 クリエイティブディレクター
自動車メーカーの研究所にてエンジンの燃料噴射システムの研究開発を経て、モビリティサービスの研究や、地域コミュニティーの研究に従事。2019年に埼玉県横瀬町に移住し、同年TISへ転職。消滅可能性都市に住む当事者として人口減少社会の課題解決に向き合う。現在は「町をイチバン楽しむ町民」、「ITテクノロジーで地域をもっと楽しく」をスローガンに地域でクリエイティブな取り組みにチャレンジしている。サウナがコミュニティハブになる可能性を感じ、横瀬町では「川とサウナ」の運営、地域の木を使った「ミノペンサウナ」の建設など、サウナを中心として活動中。