「VR」や「AR」、それらを組み合わせた「XR」などの言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。そうした技術を活用することで、家にいながら「美術館巡り」ができる時代が到来しました。今回は「VR・AR美術館」の代表例と、その魅力的について、解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
いつでもどこでも世界の美術館にアクセス!VR・AR技術で、アートがもっと身近に (※写真はイメージです/PIXTA)

絵画のなかに飛び込める!?オンライン美術館「HASARD」とは

オンライン美術館「HASARD(アザー)」

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「HASARD(アザー)」は、「好きな音楽を聞きながら、食事をしながら、お好きな形、お好きな時間で、新しいアートの楽しみ方」を提供することを目的に提供されています。

 

パリの「ルーブル美術館」やニューヨークの「メトロポリタン美術館」をはじめ、「オルセー美術館」「ロンドンナショナルギャラリー」など世界の有名ミュージアムの企画展を独自のキュレーションで楽しむことができます。

 

無料ですが展示チケットがダウンロードできるという遊び心に溢れており、鑑賞した企画展の記録としてコレクションするという楽しみ方もできます。

 

特筆すべきは「Moving Paintings-動く絵画-」というコンテンツです。クロード・モネが描く人物の背景の植物や雲がアニメーションとして動き、絵画のなかに吹かれる風や気温、かぐわしい匂いまで感じられそうです。

 

同じくモネの「アルジャントゥイユの橋」では橋のたもとに描かれる川が流れ静止画に描かれていない世界への想像力を掻き立てます。

 

一方でグスタフ・クリムトの絵画では、象徴的なゴールドの装飾による背景や人物がまとう衣服の柄などがアニメーションとして動き、クリムト独自の特徴的なパターンを静止画とは別の視点から鑑賞することができます。

 

今後VR美術館がますます増えていくうえで、こうしたコンテンツはユーザーがプラットフォームを選択する際の重要な材料となっていくでしょう。

まとめ

VR技術やAR技術は鑑賞する側だけでなく、施設を運用する側にも様々なメリットをもたらします。例えば、館内をVRで公開することは “現地を訪れて実物を見てみたい”“実際に訪れたらどんな体験ができるのだろう”と興味を抱かせて、新たな来館者を呼び込むことにつながります。顧客に、バーチャルツアーで下見の機会を提供できるのです。

 

また、AR技術で展示物にスマホをかざしたときに外国語の説明が表示されるようにすれば、アフターコロナで再び活気づいてきたインバウンド需要に応える一助になります。展示物にAR技術による体験型コンテンツを重ねれば、“現地に行って体験したい”と新たな来館者を呼び込むことにつながります。

 

エンドユーザーにとってはアート体験をより楽しませてくれるものとして、美術館や博物館にとっては作品の理解をより深めてもらい、集客に繋げられるものとして、ますます普及していくでしょう。

 

編集/福永 奈津美

 

文/湯浅 英夫

1970年、新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。学生時代よりジャズの演奏活動を行いつつ、パソコン雑誌編集部の編集アシスタント業務を経て、1997年頃よりフリーランスのライターとしても活動。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆している。音楽の守備範囲はジャズから古いソウル、ロック、AOR、MPBまで雑食。ジャズと楽器には少しうるさい。独身