子育てにあたって頭を悩ませるのが「叱り方」です。なかなか言うことを聞いてくれないことにイライラし、つい「厳しい言葉」を言ってしまったことのある人も多いのではないでしょうか。しかし、これがエスカレートすると、子どもの脳に悪影響を深刻なダメージを与えることがあると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師は警鐘を鳴らします。複数の論文をもとに、暴言が子どもに与える影響についてみていきましょう。
親の暴言は子どもの脳を「変形」させる…“言葉の暴力”がもつ想像以上の危険性【小児科医が警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

とっさに「厳しい言葉」で叱ってしまう…子への影響は?

子どもが「よくないこと」をしたときや、他人に迷惑をかける危険性があるときなど、どのような言葉をかけてあげればいいのでしょうか。子どもの「しつけ方」は、親にとって永遠の課題です。

 

「甘やかすとどんどん助長して手がつけられなくなるのではないか」

「周りの目のことを考えると、子供に好き勝手させるわけにはいかない」

 

といった理由から、ふとした瞬間に「厳しい言葉」を使ってしまうことも多いと思います。「厳しい言葉」は子どもにダメージを与える“武器”ですから、ダメージを受けた子どもは黙るしかありません。

 

では、このようについついやってしまう子どもへの「厳しい態度」は、子どもの成長にどのような影響を与えるのでしょうか。

言葉の暴力は「マルトリートメント」の1種

読者のみなさんは、諸外国を中心に近年注目が集まっている「マルトリートメント(maltreatment)」を知っていますか?

 

“マル”は「悪い」、“トリートメント”は「扱い」を指します。つまり、マルトリートメントとは「大人から子どもに対するよくない関わり」の総称です。このなかには身体的虐待だけでなく、性的虐待や心理的虐待、ネグレクトも含まれます。

 

実は、全国児童相談所でマルトリートメント、略して「マルトリ」の対応件数が年々増えています。1990年ではたった1,101件であったのが、2020年にはその186倍、20万5,029件もの相談が寄せられているのです。

 

マルトリに該当する大人から子どもへの行為にはいろいろありますが、「言葉の暴力」もこのマルトリに当てはまります。

 

2011年の暴言虐待での論文では、「𠮟りつけ、はやし立て、侮辱、非難、恐怖を与える言葉や卑しめる言葉、あざ笑う態度、過小評価」も暴言の1種とされています。そう考えると、親としては単なる「厳しい言葉」と捉えていても、子どもにとっては「言葉の暴力」ととられていても不思議ではありません。

 

では、親がこうした発言を繰り返すと子どもはどうなってしまうのでしょうか。