「東日本大震災」から12年…大きく変化した人々の生活
未曾有の被害をもたらした東日本大震災から12年が経ちました。この12年のあいだで、私たちの身の回りは大きく変化しました。その変化をもたらした代表的な存在がスマートフォンです。東日本大震災が発生する直前に行われた総務省の調査によると、日本におけるスマートフォン保有率は9.7%(※)と、当時はまだ10人に1人しかスマートフォンを持っていませんでした。現在では、その保有率は9割を超え、老若男女関わらず、ほとんどの人がスマートフォンを所有しています。
Suicaをはじめとした交通系ICの相互乗り入れ「交通系ICカード全国相互利用サービス」が始まったのが2013年、結果として交通系ICカードは全国に一気に広がりました。そしてこの交通系ICカードは、スマートフォンと連動することにより公共交通機関の利用のみならず日々のお財布代わりとして、街の至るところで使えるようになりました。日々の調べ物からスケジュール管理、友人とのコミュニケーションなど、現在の私たちはスマートフォンなしでは暮らしていけないほどにまでなったのです。
「AI」 の台頭と災害時に活用される「SNS」
この12年間で大きく進化した技術のひとつがAI(人工知能)です。2006年にジェフリー・ヒントン(英)らの研究チームにより、ニューラルネットワークの深層化手法(ディープラーニングの基本となる技術)が提唱され、そのディープラーニングを活用したDeepMind社(グーグルの子会社)の囲碁ソフト「AlphaGo」が 、2017年に当時世界ランキング1位だったプロ棋士、柯潔との三番勝負で3局全勝し話題となりました。もはやAIは人間の知性をも超えるのではないかといわれ始めるようになったのです。
防災の領域で、もうひとつ重要な発展がツイッターやフェイスブック、LINEといった「SNS」の発展です。Twitter Japanによると東日本大震災当時の日本でのツイッター利用者数は670万人ほどでしたが、現在では約6,000万人と10倍近くに増えています。LINEは震災後に誕生したサービスで、3.11当時はまだ世の中に存在すらしていませんでした。
これらSNSの利用者数が、前述のスマートフォンの普及と合わせて大きく増加したことで、災害時においては、一般市民からの被災現場のリアルな情報が発信されるようになり、災害・防災情報として欠かせないものとなっています。ツイッターに1日に投稿される数は日本語のものだけで数十億件に達するといわれています。これほどの膨大な数から災害対応に必要な情報を選別・抽出するには、AIの存在が不可欠です。
SNSはとにかく雑多な情報で溢れています。そのなかで災害対応として本当に必要とされる情報はごく僅かです。単にキーワードによる選別だけでなく、書かれている文章の文脈、添付されている画像や動画、そういった情報からつぶさに判断して、災害対応に資する情報を的確かつ正確に抽出しなければなりません。数十億件の投稿のなかから、そういった作業を瞬時に行うにはやはりAIでなければできません。
そのような災害現場でのAIの活用は、ここ数年で国や自治体のあいだでもかなり進んできています。たとえば、大分県では各地で河川の氾濫や土砂崩れなど大きな被害をもたらした「令和2年7月豪雨」で、孤立した民家に取り残された妊婦の方からのツイッター投稿を、大分県が導入したAIを活用したSNSの情報解析サービスを通じて発見し、直ちに救護活動につなげるなど、その活用事例も多くなっています。