医療の分野で活用されているAIを「医療AI」と言い、取り入れることで医療の質の向上が期待されています。その導入は多岐にわたり、すでに幅広く利用されています。医療AIが実際に活用されている導入事例、またメリットなどから、医療AIの今後の未来について考えます。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
すでに多岐に渡る医療AIの導入。人間の仕事をどこまで担うようになる? (※写真はイメージです/PIXTA)

医療におけるAI導入は多岐に渡る

最初に、「AI」とは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳されています。コンピュータを使って人間の知能を再現する技術で、高い精度でデータを分析できます。また、学習を進めていくことでよりミスを減らしつつ、短時間で膨大なデータを処理することができるようになります。

近年のAIの技術発展は目覚ましいものがあり、医療現場でも広く利用されるようになりました。現在では診断や病状の分析、日常生活の支援など多くの分野でAIの導入が進んでおり、AI導入の中でも特に注目されている分野です。

医療におけるAI導入では、診断、治療、医薬品開発、介護、ゲノム医療など、利用できる範囲は多岐にわたります。すでに様々な医療現場で活用されている医療AI。まず初めに現状ではどのように活用されているのかみていきましょう。

 

画像診断・ゲノム解析など

医療現場において最も多くAIが活用されているのが、画像診断です。レントゲンやMRIの画像からAIによって異常部分を検知することで、異常の見逃し防止や早期発見に効果を発揮しています。

カルテに記載された内容や問診結果など、様々なデータを分析する際にAIを活用することで、精密な診断が可能となりました。そのため臨床診断の段階でも、素早く正確に病気を特定したり、見逃しがちなわずかな異常の発見につながったりし、診断ミスの防止に役立っています。

医療の現場では、人手不足や重労働といった問題が深刻です。そのため実際に、医療機器にAIを組み込む取り組みが積極的に行われており、医療スタッフの業務の軽減や効率化にも一役買っています。

遺伝子情報を解析することを「ゲノム解析」といいます。ゲノムには膨大な量の情報が含まれますが、これをAIが解析することで疾病の診断を的確に行えるようになりました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

このように、医療AIの診断力は年々向上し、現在ではその精度は人間の医師と同等か、それ以上であるとされています。

一方で、現在のように医療AIが進化してもできないことはあります。それは、イレギュラーなことに対応したり、人と柔軟なコミュニケーションをとることです。AIには人間の心がないため、患者の心に寄り添うことができません。

また、どんなに医療AIが進化したとしても、最終的な判断を任せることはできず、人間が管理して責任を持つことになります。機械であるAIにどこまで責任のある仕事を任せることができるのか、そのあたりについては議論を続けていく必要があります。