「人間の仕事は、いずれAI(人工知能)に奪われていく」そのような声が叫ばれ始めてから、私たち人間しか成し得ない能力や役割が見直され、しばしば議論されるようになりました。AIと対峙するのではなく、相互補完し、新たな価値を生み出す未来について、専門家が詳しく解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
AIに「仕事を奪われる」ではなく、AIが「新たな仕事を生み出す」時代へ (※写真はイメージです/PIXTA)

長時間労働で知られるエンジニア職も、今後は労働時間ではなく、「他の人が解けない難問を解ける人材」にこそ価値がより出てくるでしょう。労働という行為そのものの価値が、「1日8時間労働」という時間の長さではなく、「AIを活用してより高度な難問を解ける」ことに比重が変わっていくはずです。

 

AIに仕事を奪われるのではありません。人間の能力を拡張する技術として、AIを利用していく術を、私たちは考えていくべきでしょう。

 

そうした視点でAIや最新テクノロジーに向き合えば、見える世界は変わります。AIの台頭によって自身が身を置く業界に新たに誕生する価値は何か、どこに新たなニーズがあるのか、AIが解析した結果をどうコミュニケーションに活用させられるか…。頭脳労働の高度化によって、人間がすべき仕事のレベルが上がる、と解釈するのが妥当でしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

「プロ野球の動画コンテンツ」という新たな試み

新しい技術によって誕生した取り組みの一例として、パ・リーグのNFT(非代替トークン)事業があります。

 

スポーツ業界といえば最先端テクノロジーとは縁遠いイメージがあるかもしれませんが、程遠いように見えるがゆえに、意外な組み合わせが価値を生む可能性も秘めています。

 

プロ野球パ・リーグ6球団の共同出資会社「パシフィックリーグマーケティング(PLM)」はメルカリと連携して、2021年からNFT事業を展開しています。

 

PLMが提供する「パ・リーグ Exciting Moments β(エキサイティング・モーメンツ・ベータ)」は、パ・リーグ6球団の試合映像から名場面やメモリアルシーンを捉えた動画コンテンツを数量限定で販売することで、その動画を自分だけのコレクションとできるサービスです。「あの名場面の特別な瞬間を動画で保有したい」という気持ちは、スポーツファンなら容易に理解できるでしょう。

 

現在はまだ販売がメインですが、2022年には期間限定で、動画コンテンツを購入した人に抽選で公式戦の始球式投球権を付与する試みも行われています。

 

近い将来は球場やスタジアム内にNFT保有者限定エリアを設けるなどの取り組みも行われるかもしれません。新型コロナウイルスの影響で一時は観客者数を制限しなければならなかったスポーツ業界にとって、新たな収入源となる可能性があります。