この春、新型コロナウイルス感染症の第5類への移行となるなか、人々がマスクをつける頻度は、どのように変化しているのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の村松容子氏が「子育て世代」に焦点をあて解説します。
子育て中の人々のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化 (写真はイメージです/PIXTA)

3―男女別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

まず男女別に、外出時*6にマスクをつける頻度を確認したのが【図1】である。コロナ禍前の分布については、男性と女性で大きな違いは見られないが、2022年10月現在の分布を見ると、「常につけている」人の割合が、男性よりも女性の方が大きい傾向が見られる*7

 

【図1】
【図1】

 

同様に、男女別に、職場でマスクをつける頻度を確認したのが【図2】である。こちらについても、コロナ禍前の分布については、男性と女性で大きな違いは見られないが、2022年10月現在の分布を見ると、「常につけている」人の割合が、男性よりも女性の方が大きい傾向が見られる*8

 

【図2】
【図2】

 

*6: 「外出時」については、質問の際、以下のように注記をしている「買い物時や散歩等、目的に応じて異なる場合は、総合的な頻度でお答えください」

*7:後の項の表1で紹介する回帰分析の結果からも、男性よりも女性の方が、外出時に常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向が確認できる。

*8:図2, 図4, 図6で、コロナ禍前と2022年10月現在でのnが異なっているのは、職場があると答えた人の数が変わっているからである。後の項の表2で紹介する回帰分析の結果からも、男性よりも女性の方が、職場で常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向が確認できる。

4―年齢層別マスクをつける頻度のコロナ禍前後の変化

次に、外出時にマスクをつける頻度を年齢層別に確認したのが、【図3】である。最も低い年齢層である34歳以下の回答者の間では、その他の年齢層に比べて、コロナ禍前にマスクを「常につけている」と回答した人の割合は最も大きく、コロナ禍前にマスクを「つけていない」と回答した人の割合は最も小さい。しかし、2022年10月現在では、マスクを「常につけている」人の割合は、その他の年齢層に比べて最も小さくなっている。

 

【図3】
【図3】

 

一方で、最も高い年齢層である55歳以上の回答者の間では、コロナ禍前に外出時にマスクを「常につけている」と回答した人の割合はその他の年齢層に比べて最も小さく、コロナ禍前にマスクを「つけていない」と回答した人の割合はその他の年齢層に比べて最も大きい。しかし、2022年10月現在でマスクを「常につけている」人の割合は、34歳以下を除くその他の年齢層と同程度となっている。低年齢層よりも高年齢層が、コロナによって、外出時によりマスクをつけるようになったということが示唆されるかもしれない。

 

同様に、職場でマスクをつける頻度について年齢層別に確認したのが、【図4】である。こちらからも、外出時にマスクをつける頻度の年齢層別で見られた傾向と同様の傾向が確認できる。つまり、低年齢層(34歳以下)ではコロナ禍前からマスクを常につけている人の割合が大きいが、2022年10月現在ではマスクを常につけている人の割合がその他の年齢層に比べて小さいことと、高年齢層(55歳以上)では、コロナ禍前はマスクをつけていない人の割合が大きいが、2022年10月現在では、マスクをつけている人の割合は34歳以下を除くその他の年齢層と同程度である傾向が見られる。



職場においても、低年齢層よりも高年齢層が、コロナによって、よりマスクをつけるように行動変容したことが示唆されるかもしれない。

 

【図4】
【図4】

5―子どもの持病の有無別

1|子どもの持病の有無別のマスクをつける頻度

さらに、本調査は子育て中の人々を対象にしているため、子の持病の有無によっても、マスクをつける頻度が異なる可能性が考えられるかもしれない。そこで、外出時にマスクをつける頻度を、子の持病の有無別に確認したのが、【図5】である。子の持病がある場合、子の持病の無い人に比べて、コロナ禍前から常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向が見られる。2022年10月時点でも子の持病がある人の方がマスクを常につけている人の割合は大きいが、子の持病が無い人に比べて、差が開いた傾向は見られない。

 

【図5】
【図5】

 

加えて、職場でマスクをつける頻度を、子の持病の有無別に確認したのが、【図6】である。子の持病がある場合、子の持病の無い人に比べて、コロナ禍前から常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向があるのは、【図5】で確認した外出時の傾向と同様である。そして、2022年10月時点では、子の持病の有無によって、常にマスクをつけている人の割合に大きな違いは見られない。

 

【図6】
【図6】

 

2|子どもの持病の有無と育児分担割合とマスクをつける頻度の関係

子どもの持病の有無によってマスクをつけるようになるかどうかは、普段子どもとどれくらい関わっているかに依存する可能性が考えられる。そこで、育児分担割合とマスクをつける頻度の関係を確認するために行った線形確率モデルの推定結果が【表1】【表2】である。

 

【表1】では、被説明変数を、2022年10月時点で、外出時に常にマスクをつけている場合に1を取り、それ以外の場合に0を取るダミー変数とし、【表2】では、2022年10月時点で、職場で常にマスクをつけている場合に1を取り、それ以外の場合に0を取るダミー変数としている。

 

【表1】からは、子どもの持病有×育児分担割合の交差項が正で統計的に有意(有意水準10%未満)であり、育児分担割合が大きい人ほど、コロナ禍でマスクをつけていることが確認できる(列2)。さらに、コロナ禍前に常にマスクをしていたかどうかを調整したモデルでも同様の傾向が確認できる(列4)。一方で、【表2】の推定では、子どもの持病有×育児分担割合の交差項は(2の推定、列4の推定共に)統計的に有意でなく、外出時にマスクをつける行動と同様の傾向は確認されなかった。

 

【表1】
【表1】
【表2】
【表2】

6―おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々を対象に行った独自のWEBアンケート調査を用いて、コロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化について、男女、年齢層、子どもの持病の有無別に確認した分析結果を紹介した。

 

コロナ禍前には、外出時や職場で常にマスクをつけている人の割合は、男女で大きな違いは見られなかったが、2022年10月時点で、外出時や職場で常にマスクをつけている人の割合は男性よりも女性の方が大きかった。また、年齢層別に比較すると、コロナ禍前には低年齢層(34歳以下)でマスクを常につけている人の割合が大きく、高年齢層(55歳以上)ではマスクをつけていない人の割合が大きかったが、2022年10月時点では、低年齢層(34歳以下)でマスクをつけている人の割合は小さく、高年齢層(55歳以上)では、34歳以下を除くその他の年齢層と同程度であった。

 

これらから、コロナ禍でマスクをつけるようになるという行動変容は、男性よりも女性の間で、そして低年齢層よりも高年齢層でより顕著に起こった傾向が示唆された。また、子どもに持病がある場合は、育児分担割合が大きいほど、外出時に常にマスクをつけるようになった傾向が見られた。

 

ポストコロナの社会で、日本の人々は今後どのようにマスクと付き合っていくことになるのだろうか。人々がマスクをつける理由について今後分析を深めるとともに、動向を注視していく必要があるだろう。

 

一方で、最も高い年齢層である55歳以上の回答者の間では、コロナ禍前に外出時にマスクを「常につけている」と回答した人の割合はその他の年齢層に比べて最も小さく、コロナ禍前にマスクを「つけていない」と回答した人の割合はその他の年齢層に比べて最も大きい。しかし、2022年10月現在でマスクを「常につけている」人の割合は、34歳以下を除くその他の年齢層と同程度となっている。低年齢層よりも高年齢層が、コロナによって、外出時によりマスクをつけるようになったということが示唆されるかもしれない。

 

同様に、職場でマスクをつける頻度について年齢層別に確認したのが、【図4】である。こちらからも、外出時にマスクをつける頻度の年齢層別で見られた傾向と同様の傾向が確認できる。つまり、低年齢層(34歳以下)ではコロナ禍前からマスクを常につけている人の割合が大きいが、2022年10月現在ではマスクを常につけている人の割合がその他の年齢層に比べて小さいことと、高年齢層(55歳以上)では、コロナ禍前はマスクをつけていない人の割合が大きいが、2022年10月現在では、マスクをつけている人の割合は34歳以下を除くその他の年齢層と同程度である傾向が見られる。

 

職場においても、低年齢層よりも高年齢層が、コロナによって、よりマスクをつけるように行動変容したことが示唆されるかもしれない。