1. DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。本項では、その定義について解説します。
1.1. DXとはデジタル化により暮らしやビジネスを根本から変革すること
DXとは、デジタル化により暮らしやビジネスを根本から変革することを指します。要注意なのは、単に作業の効率を上げることやコストを削減することが目的ではないということです。
企業がDXを推進することで、人々の生活に変化を与えたり、価値観を一変させたりするという改革が求められているのです。
1.2. DXの定義は初出から変遷している
DXという言葉の定義は、初出から変遷しており、現在ではより具体的なものとなっています。利用シーンごとに意味が異なる3つの定義があります。
1.2.1. 元来の定義
元来の定義は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」というものです。2004年にスウェーデンのウメオ大学教授(当時)のエリック・ストルターマンによって提唱されたものです。
初出の定義は、企業の成長に必要な要素というものではなく、人々の生活の変化に着目しているのがポイントです。
1.2.2. ビジネス界における定義
2010年代には、ビジネスシーンにおいても、企業の成長に必要不可欠なものとして位置付けられるようになりました。
語られる文脈や人によって解釈が異なるものの、おおよその定義は「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」というものです。
1.2.3. 経済産業省「DX推進ガイドライン」における定義
経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」においては、DXについて明確に定義しています。現在では「デジタルガバナンス・コード」と統合され、「デジタルガバナンス・コード2.0」として公表されています。
ここでは、DXを以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用:デジタルガバナンスコード2.0(2022,経済産業省)
1.3. デジタル・トランスフォーメーションが「DX」と略される理由
デジタル・トランスフォーメーションは英語で「Digital Transformation」と記載するにもかかわらず、「DT」ではなく、「DX」と略されています。
その心はは、英語圏において、「trans」が交差を意味する「x」と置き換えられているからです。また、「DT」だと野暮ったいイメージが拭えず、「DX」のほうが字面がよいということもあるようです。
2.【図解】DXとデジタル化の違いと関係性
よく混同されがちなDXと「デジタル化」との違い、および両者の関係について解説します。
2.1. 違いは「変革の段階」|DXはデジタル化の末に達成される
DXとデジタル化の違いは「変革の段階」の違いです。デジタル化はデジタル技術を導入した段階で達成となりますが、DXはビジネスや人々の生活を根本から改革するものなので、デジタル化の末に達成されます。つまり、デジタル化はDXのスタート段階であるともいえます。
2.2.【図解】デジタル化からDXに到達するまでの段階
前述の通り、デジタル化はDXのスタート段階に過ぎません。デジタル化からDXに至るまでの過程は、「デジタイゼーション」・「デジタライゼーション」・「デジタルトランスフォーメーション」の3つに分けられているので、それぞれ解説します。
2.2.1. デジタイゼーション(データのデジタル化)
最初の過程であるデジタイゼーションは、これまでアナログで行ってきたデータ収集などの業務をデジタル化することから始まります。これにより、業務の効率化や可視化、コストの削減など、企業にとって多くの利益がもたらされます。
具体例として、請求書のやり取りを紙媒体からPDFでのやり取りに変更すること、対面で打ち合わせしていたものをオンライン化することなどが挙げられます。
2.2.2. デジタライゼーション(プロセスのデジタル化)
次のステップである「デジタライゼーション」は、デジタル化だけにとどまりません。ビジネスモデルや業務プロセスを一新することを指します。
具体例としては、音楽や動画の配信サービスが挙げられます。従来の一般的なビジネスモデルは、レンタルショップに来てくれた顧客にCDやDVDを貸し出すというものでしたが、配信サービスはコンテンツのやりとりがオンラインで完結できるように一新されたものです。
2.2.3. デジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタルトランスフォーメーションは、上記の2つのステップを経て実現する最終段階です。業務プロセスやビジネスモデルが一新されたことにより、社会的な影響を生み出している状態をさします。
デジタライゼーションで挙げた音楽や動画配信サービスは、オンラインで音楽や動画を再生できることによって、いまではほとんどの人が利用するようになりました。このように人々の生活に変化を与えている段階まで達したのがデジタルトランスフォーメーションです。
3. 他にもある! DXと混同しがちな言葉の違いは?
デジタル化の他にも、DXと混同されがちな言葉が存在します。本項では「IT化」や「UX」「CX」との違いを解説します。
3.1. IT化との違い|IT化はDX達成の手段の1つ
IT化はデジタル化と同じく、DXを達成する手段の1つに過ぎません。ITは「Information Technology」の略ですが、IT化とは、既存のアナログ作業にデジタル技術を取り入れて効率化させることを意味します。業務プロセス自体に変化はもたらさないので、DXにおける最初のステップとして取り入れられることがほとんどです。
3.2. UX・CXとの違い|DXとは方向性が異なる
UXとは、「user experience」の略で、商品やサービスの利用を通してユーザーが得る体験を示す言葉です。このUX(ユーザー体験)の満足度が高ければ、ユーザーは再度商品を購入したいと考えます。
CXは、「costomer experience」の略で、商品やサービスを利用したユーザーが商品そのものの価値だけでなく、問い合わせへの対応等あらゆるタッチポイントにおいてユーザーが体験することを意味します。UXと意味が似ていますが、CXはカスタマーセンターの対応や説明書の記載など、企業とユーザーが関わるポイントを評価しているという点で異なります。
UXやCXに対する企業の取り組みは、どちらもユーザー体験の満足度を上げることを目的としているので、DXとは言葉の方向性が異なるのです。
4. DXが日本企業にとって急務である理由
DXが日本企業にとって急務であるといわれている理由を解説します。
4.1.「2025年の崖」を越えるため
「2025年の崖」とは、経済産業省が「DXレポート」で示したもので、将来の日本の経済状況について警鐘を鳴らすものです。
既存の複雑化・老朽化したシステムが残存することで、維持管理費の高額化やセキュリティ上のトラブルが予想され、2025年~2030年の間で年間最大12兆円の損失が生じるとされています。
この「2025年の崖」を越えなければ、日本は世界とのデジタル競争の敗者となり、経済が大きく停滞してしまうため、日本企業にはDXの推進が必要だということです。
4.2. コロナ禍で露呈したビジネス文化の後進性と危機管理の問題の解消のため
コロナ禍によって、多くの企業が通常通りの業務をこなせなくなり、大きな経済損失を招いたのは記憶に新しいことです。その他にも、日本では地震や豪雨などの自然災害が多発しているので、いざというときに備えて危機管理体制を強化する必要があります。
DXの推進は、基幹システムのクラウド化によって、データ消失のリスクを回避するとともに、リモートワークを可能にするものであり、事業継続という観点において急務であるといえます。
5. 多くの企業が立ち遅れている日本のDXの現状
日本では、多くの企業がDXに立ち遅れています。企業の7割以上がDXに着手してはいるものの、ビジネスモデルや組織体制を一新し、本格的な変革に向けて取り組んでいる企業は少ないのが現状です。
5.1. 企業の7割以上がDXに着手している
2020年に電通デジタルが公表している調査結果では、日本企業の74%がDXに着手していると報告されています。
取り組みの内容としては、オンライン会議設備の導入やペーパーレス化など、DXにおける最初のステップであるデジタル化を行っている企業がほとんどです。
この調査では、コロナ禍による影響がDXの推進を後押ししていたことも判明しています。
5.2.「攻めのDX」に取り組んでいる企業は1割程度のみ
DXの最初のステップであるデジタル化に取り組む企業が多いなか、ビジネスモデルや組織マインドを一新し、まったく新しい価値の創出に取り組む「攻めのDX」に取り組んでいる企業は約1割のみとなっています。
参考:帝国データバンク「DX推進に関する企業の動向アンケート」
このような現状になっている理由として、DX人材の不足が最も深刻な問題として取り上げられており、DXを推進するためには、DX人材の育成が必要であることが明らかになっています。
6. 日本企業のDX化が進まない理由とは? 足枷となる6つの課題
日本企業のDXが遅れているのには明確な理由があります。ここではDX推進に向けて足枷となっている6つの課題を紹介します。
6.1. 慎重で変革が苦手な風土
日本は昔から伝統的な文化を重んじる傾向にあり、変化や改革を苦手とする風土があります。
インターネットが普及しているとはいえ、デジタル化にすら精神的な抵抗を示す人がまだまだ多いのが現状です。DXを推進するためには、従業員など、変革に関わる人の意識改革を最初に行う必要があります。
6.2. 明確なビジョンの欠如
効率化やコスト削減の側面だけに囚われて、明確なビジョンが欠如している企業が多いのが現状です。
社長の号令で意義も目的も不明確なまま「とりあえず機械を導入する」といったケースも少なくありません。導入後にどのような効果を期待しているのかなど、明確なビジョンを持たないDXは、改革の遅延や失敗に繋がります。
6.3. 非効率なレガシーシステムと業務プロセス
日本企業が導入している基幹システムは、それぞれの企業向けに細かくカスタマイズされていることが多く、それが新しいシステムへの移行を阻害しています。
また、職人技による手作業に頼った非効率的な業務プロセスが主流となっており、変化を苦手とする日本の風土と相まって、変革を起こしづらいのが現状です。
この課題をクリアしない限り、上記でも解説した「2025年の崖」によって大きな損失を招くことになります。
6.4. DX人材の不足と獲得の難しさ
最もDX推進の妨げとなっているのは、ITスキルに堪能なDX人材が不足していることです。DX人材は転職市場で新規に獲得することも難しいため、外部のソリューション企業などを活用しながら、社内の人材を育成する取り組みを行うことが、課題解決に向けて必要です。
6.5. 予算策定の難しさ
デジタル技術を導入する際の予算策定の難しさもDX推進の障壁となっています。顧客のニーズに合わせて、システムをカスタマイズしていく必要があるので、当初の予想よりも予算やスケジュールが増えていくことが考えられます。
この課題を克服するためには、2つめの課題として紹介した「明確なビジョン」を社内で強く浸透させておく必要があります。
6.6. 常に変化する顧客ニーズの把握
コロナ禍によるサービスのオンライン化、決済手段の多様化が当たり前になるなど、顧客ニーズは常に変化しています。
この顧客ニーズの把握は困難を極めますが、DXの推進に欠かせない重要な要素となっています。DXの推進には、顧客が何を求めているのか把握しようとする姿勢が必要です。
7. DX推進の先にある6つのメリット
DXを推進することは様々なメリットをもたらします。本項では6つのメリットを紹介します。
7.1. 業務プロセスの効率化による生産性向上
DXの最初のステップでは、デジタル技術を取り入れ、紙媒体などでアナログ管理していた作業をデジタル化することで業務プロセスを効率化させます。業務プロセスが効率化されれば、生産性の向上が見込め、サービスを提供する速度や量、質の向上が期待できるでしょう。
7.2. UX・CXの向上
前述の通り、UX・CXは、DXと言葉の意味・方向性が異なります。しかし、これらはDXと無関係ではありません。
DXを推進することは、デジタル技術を取り入れて新しい商品やサービスを開発し、新しい価値を創出するということです。つまり、DXが達成されれば、顧客満足度を意味するUXやCXの向上も見込めます。
DXの推進は、UXやCXを向上させるための手段の1つなのです。
7.3. 収益の拡大
DXを推進する過程で行うデジタル化は、それ自体が業務の効率化やコストの削減をもたらします。また、新しい商品やサービスを生み出し、新たな価値を創出することに成功すれば、収益の拡大が期待できます。
7.4. 意思決定の迅速化
デジタル化が進んでいる企業は、大量のデータを保有し、かつ素早くアクセスできるようになります。分析ツールを導入すれば、リアルタイムでデータを集計し、共有することも可能です。
これらのデータを適切に活用すれば、データに基づいた正しい選択ができるのはもちろん、意思決定にかかる時間を短縮できるようになります。
7.5. 新たな商品や新規サービスの開発
DXを推進する過程で行うデジタル化によって、業務の効率化とコストの削減を実現できれば、空いたリソースを新たな商品やサービスの開発に向けることができます。
人々の生活に変革を与えるDXを達成するためにも、顧客のニーズを念入りに調査することが重要です。
7.6. 事業継続性の獲得
基幹システムのクラウド化を実現できれば、書類の紛失リスクを低減し、危機管理体制の強化に繋がります。また、リモートワークを推進することで、天災が起こった際や疫病が蔓延した際でも、場所を選ばずに業務を進めることができるので、事業継続性の強化に繋がります。
8. 日本企業がDXを推進・実現した3つの事例
DXを推進するにあたっては、すでに成功している企業の事例が参考となります。本項では、DXを実現している日本企業の事例を3つ紹介します。
8.1. 大塚デジタルヘルス株式会社:MENTAT®
大塚デジタルヘルス株式会社は、大塚製薬と日本アイ・ビー・エムの合弁会社です。精神科医療に対するデジタルソリューション事業を行うために設立されました。
精神科医療では、従来、病歴や病状を電子カルテに自由記述していたために医療情報の多くが数値化されておらず、データの活用がされていないという課題を抱えていました。
この課題を解決するために、大塚デジタルヘルス株式会社は、病歴や病状などの記述を統合・分析してデータベース化し、よりよい医療を提供するためのテクノロジーとして「MENTAT®」を開発しています。
「MENTAT®」は電子カルテに記載されている情報を分析し、患者に最適なアプローチをするために役立てられています。
8.2. 凸版印刷株式会社:DXデザイン事業部の設立
創業から印刷業を営んできた凸版印刷株式会社は、DXを推進するにあたって、DXデザイン事業部を1,000人規模で新設しています。
ICT開発センターは、DXを推進してまったく新しい価値を創出する取り組みを行うことを目的として、SaaSの開発、地域移住を検討している生活者と自治体のマッチングサービスの開発などを行っているのが特徴です。印刷業からの事業改革が評価され、2021年から2年連続で「DX銘柄」に選出されています。
8.3. 株式会社ベネッセホールディングス:手段としてのDX
株式会社ベネッセホールディングスは、一人ひとりがより「よく生きる」ための手段として、DXの推進に力を入れています。
具体例としては、AI/ML(人工知能/機械学習)を活用した認知用ケア支援、約200万人存在する会員の学習履歴データと小中高生指導のノウハウをAI技術と融合し、個別の学習サービスを提供したことなどが挙げられます。
こうした取り組みが評価され、2021年5月には経済産業省の「DX認定」を取得しています。
9. DX推進手順6つのステップ
DX推進の手順は6つに分けることができます。
ステップ1|明確な目標を決める
DXを単なるデジタル化で終わらせないために、まず、DXによって実現させたい明確な目標を定めます。
DX推進自体が目標になってしまうと、目先の作業の効率化やコスト低減などに意識が傾いてしまいます。DX推進はあくまで、目標達成のための手段とし、目標を達成させるまでの道筋を捉えた戦略を練ることが重要です。
ステップ2|DX人材を増やして推進体制を構築する
目標を定めたら、次に行うのは推進体制の構築です。新たな商品やサービスを生み出し、価値を創出するといった大規模な変革を起こすためには、DX専用の事業部を設立するなど、大掛かりな組織体制を整備する必要があります。
DX人材の育成を行うため、期間やコストを定め、外部のソリューション企業を頼るなど、適切な判断が求められます。
ステップ3|既存プロセスを解析して課題を整理する
次に、現在使用しているシステムや採用している業務プロセスを解析し、課題を整理する必要があります。
老朽化・複雑化したレガシーシステムがないか、複数のシステムを利用している場合は、連携がスムーズに取れているのかを確認する必要があります。
そのうえで、システムや工程を見直せば、効率化できそうな箇所を特定できるでしょう。
ステップ4|業務プロセス改善に必要なツールを導入する
ステップ4は「デジタライゼーション」の段階に該当します。ステップ3で改善が必要と判断された工程にクラウドサービスやアプリなどのデジタル技術を導入し、業務の効率化やコストの削減を図ります。
世の中には多くのデジタルサービスが提供されているので、自社のサービスとの相性がよいものを導入するとともに、「ステップ1」で決定したDX推進の先にある目標を実現させるために必要なシステムを導入する必要があります。
ステップ5|社内教育を徹底して新たなシステムの運用を図る
ステップ5は、DXの成功を左右する重要なステップです。業務の効率化に目を向けた「守りのDX」ではなく、新たな価値を創出する「攻めのDX」を社員全員が意識する必要があります。
DXを推進することによって実現したい目標、DXを推進しないとどのような損害が発生するのかなど、DXを推進する目的を社内に浸透させ、DX人材を中心に新たなシステムの運用を図ります。
ステップ6|PDCAサイクルを回してシステムや組織を改善し続ける
最後のステップは、PDCAサイクルを回して継続的にシステムや組織を見直すことです。
DXを推進して目標を達成したとしても、そこで満足することなく、常に改善し続ける姿勢がなければ、企業の成長には繋がりません。
10. DXを効率よく推進するための5つのポイント
DXを効率よく推進するためには5つのポイントを押さえる必要があります。
ポイント1|経営陣が率先してリーダーシップをとる
DXの推進は、経営陣が率先してリーダーシップを取ることが重要です。
DXを推進する目的や目標をあらかじめ理解し、社内に示す必要があります。
デジタル技術を活用したIT戦略や事業の基盤となる事業戦略を絡めながら、経営陣主導のもと、DXを進めていきましょう。
ポイント2|全社的な取り組みと捉えてDXを理解する
DXは、経営陣や専門の部門の社員だけで行うものではありません。全社的な取り組みと捉え、社員全員に共有する必要があります。
DXの意味や目的を共有することはもちろん、DX人材の育成過程やDX推進の進捗についても共有することが大切です。
ポイント3|アジャイル思考で取り組む
アジャイル思考とは、PDCAサイクルを短期間で素早く回すことにより、その価値を高めていくという考え方のことです。
顧客のニーズや社会情勢の変化に対応し、新しい価値を創出するためには、スピード感を持って、DX推進を行う必要があります。
ポイント4|DX人材の育成を図る
DXを推進するためには、DX人材の育成が欠かせません。転職市場においてDX人材は不足しているため、自社に所属する社員のなかから適性を見極めて人材を選出する必要があります。
ITスキルなどの技術面だけでなく、コミュニケーション能力やリーダーシップ等、ビジネス面での素養も見極めることが重要です。
ポイント5|外部のソリューション企業の活用を適切に行う
DX推進に取り掛かっても、最初のうちはDX人材が不足し、必要な経験を得ることすら困難です。そこで、DX推進をサポートしている外部ソリューション企業の活用を適切に行う必要があります。
デジタル技術の活用に慣れている外部企業からOJTなどにより引き継ぎを受けながら、徐々に内製化していくのが理想です。
11. DX推進に向けて押さえるべきデジタル技術とツール
最後に、DX推進に有用な6つのデジタル技術と、4つのツールを紹介します。
11.1. DXを支える6つのデジタル技術
DXを支えるデジタル技術として以下の6つが存在します。
- IoT技術
- 人工知能(AI:artificial intelligence)
- クラウド技術
- 5G
- 様々なサイバーセキュリティ技術
- VR・AR
「IoT」は「Internet of Things」の略で、これまでインターネットに接続されていなかったモノをインターネットに接続できるようにする技術を指します。loT技術は、離れた場所にある商品やサービスの状態を把握することなどに活用できです。
「人工知能(AI)」は、収集したデータを基に、高精度な予測を行うことに活用されています。
「クラウド技術」はインターネット上にデータを保管することができるもので、あらゆる場所からのアクセスを可能にしています。
「5G」は「第5世代移動通信」システムと呼ばれ、主に携帯電話などの通信に用いられている通信規格のひとつです。インターネット上にある膨大なデータを高速で繋ぐ通信技術は、DXを支える他のデジタル技術を利用するうえで必要不可欠だといえます。
「サイバーセキュリティ技術」は、デジタル化された情報の漏洩や改ざんを防ぐ目的で利用されています。
「VR(仮想現実)」と「AR(拡張現実)」はどちらも環境をシミュレーションし、それをユーザーに届ける技術です。
11.2. DX推進に役立つ4つのツール
次に、DX推進に役立つツールを紹介します。現在では主に以下のツールが利用されています。
- チャットツール
- マーケティングオートメーションツール
- 顧客・社内情報管理ツール
- プロセス自動化ツール(RPA)
「チャットツール」は、メッセージでやり取りをしたり、ファイルの送受信をしたりすることが可能です。タスクやプロジェクトを設定し、進捗状況を管理できる機能がDXを推進するうえで役立ちます。
「マーケティングオートメーションツール」は、メールの自動配信や顧客情報の管理・分析などを可能にし、マーケティング活動を仕組み化することで業務の効率化をもたらします。
「顧客・社内情報管理ツール」は「CRM」とも略されます。顧客や社内の情報を管理し、顧客に対して適切なアプローチを行うのに役立ちます。
「プロセス自動化ツール(RPA)」は、これまで人が行っていたデータ入力などの作業を、ロボットが行うことで自動化できるものです。これにより、業務の効率化が見込まれるのはもちろん、人為的ミスを削減することができます。
まとめ
効率化やコスト削減だけに目を向けたデジタル化ではなく、いま日本の企業に求められているのは、デジタル技術の活用によって新しい価値を創出するDXの推進です。
警告されている「2025年の崖」による大きな経済損失を防ぐためにも、経営陣を中心に全社一丸となって取り組む必要があります。
本記事で紹介したDXの3つの段階と、DXを効率よく推進するための5つのポイントを押さえ、DX推進に関わる取り組みを強化していく必要があります。